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最多130人一時帰宅 田村市都路 高校生 母手助け

無事に一時帰宅を済ませ、帰路に就く雄太君(中央)と清子さん(左)

 東京電力福島第一原発事故による警戒区域指定から丸1カ月が経過した22日、福島県田村市都路町の住民が一時帰宅した。母親を助けて荷物を運び出した16歳の高校生は大役を終えて胸をなで下ろした。飼っていた牛との再会を果たした畜産農家もおり、住民はさまざまな思いを胸に住み慣れた自宅で、つかの間の時間を過ごした。参加者は130人で初めて100人を超え、規模はこれまでで最大。防護服の暑さ対策なども施された。
 「母の役に立てて良かった。(放射線の)怖さはなかった」。双葉翔陽高2年の大井川雄太君(16)は、看護師の母清子さん(51)と3月12日以来、初めて田村市都路町古道字場々の自宅に戻った。
 母と同校1年の妹・有さん(15)と3人で小野町のアパートで避難生活を送る。母から一時帰宅に同行できるかを問われ、すぐに帰宅することを決めた。息子の健康を考え、母が迷っていることを感じていた。「母一人では持ち出す物にも限りがあるはず。力になれるのは自分だけだから」
 双葉翔陽高のサテライト校となった小野高に通っている。クラスでは福島第一原発事故や放射線の影響などが話題になることもある。一時帰宅の話を友人に告げると「頑張って」と励まされた。
 避難から2カ月余が過ぎた古里は緑が濃くなっていた。飼い猫3匹のうち、1匹が自宅に残っていた。家の中は猫が散らかした様子はあったが、時間が止まったかのように当時のままだった。
 あっという間の2時間。小中学校の卒業アルバムや友人からもらったイタリア土産を探し出した。母と妹のために布団乾燥機や衣類、小説や教科書なども袋に詰めた。いつ戻ってもいいように自分の部屋を片付けた。
 防護服を着て家に入り、ふと考えた。いつまで、こんな生活が続くのだろうか。原発事故が収束し、以前のような「普通の生活」が1日も早く訪れることを願っている。


■牛と再会安堵 畜産業石井さん夫妻

 田村市都路町古道字尾ノ川の畜産業石井好男さん(70)、栄子さん(66)夫妻は最大の目的だった牛との再会を果たし、安堵(あんど)の表情を浮かべた。
 東日本大震災後に千葉県の娘宅に避難したが、飼育する5頭の牛が心配で市内の旧春山小の避難所に移った。警戒区域指定前日の4月21日に家に戻り、餌を与えてから牛舎の柵を外した。
 一時帰宅では早めに荷物をまとめ、「牛の群れがいる」と聞いた方角に市の車両で向かった。500メートルほど離れた草地に、飼っていた雌牛のモモコをはじめ7頭がいた。栄子さんが以前のように呼ぶと、再会を待ち望んでいたかのようにモモコが振り向いた。「無事が確認できて本当に良かった」
 しかし、時間制限や雨の影響で、車内から写真を撮るのが精いっぱいだった。
 警戒区域内の畜産農家は牛の安楽死処分への同意を国に求められている。
 「区域外に連れ出しても餌を買う金がない」。好男さんは、そう考えていたが、元気な姿を見て心が揺れ動いている。

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