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フクシマからの報告3(4)閉ざされた国際線 経済、産業に影落とす

国際線の路線運休が続く福島空港。3月下旬からゲートは閉ざされたままになっている

 「アジア全体が原発事故を恐れている」。福島空港発着の国際線を運航する中国東方航空、アシアナ航空の担当者は口をそろえる。東京電力福島第一原発の事故から10日もしないうちに中国・上海路線、韓国・ソウル路線とも運休となった。
 福島空港周辺の放射線量は毎時0.2マイクロシーベルト程度で推移し、国内2路線は平常通り運航している。原発事故以前、集客に苦戦していた国際線のロビーのゲートは今も閉ざされ人影はない。
 「ソウル路線はいつから復活するのか」。矢吹町のアローレイクカンツリー●楽部支配人の黒川正幸(43)は、しびれを切らし今月初旬、アシアナ航空に電話を掛けた。「今年は飛ばないでしょう。韓国での福島のイメージはチェルノブイリと同じ」。担当者は淡々と答えた。
 知り合いの韓国人夫妻が原発事故後、帰国する際につぶやいた。「日本で働いていたり、留学していたりした女性は嫁に行けないと言われています」。夫妻は申し訳なさそうに韓国内での原発事故への反応を教えてくれた。ゴルフ場は7年ほど前から韓国人向けの割引サービスを設け、客足を伸ばしてきた。「昨年は4万4000人の利用者のうち、7割は韓国人だったのに...」。3月から5月の売り上げは昨年に比べ約8000万円減った。黒川は帳簿を手にうなだれる。
 本来であればソウル路線は4、5月、週3便から5便になる予定だった。県は交流が一層進むことに期待を寄せていた。
 本県との橋渡し役として県から自治体国際化協会ソウル事務所に出向している武藤晶子(36)は4月上旬、インターネットで気になるニュースを見つけた。「韓国北西部で幼稚園や小中学校約130校が休園、休校」。放射性物質を含む雨を避けるため、と報じていた。韓国人から「原発は大丈夫ですか」と声を掛けられることも増えた。「放射性物質に対して日本以上に敏感になっている」。武藤は隣国の反応に戸惑い、「福島離れ」の深刻さを肌で感じている。
 世界最大規模の市場となった中国。上海路線は県内企業の利用が大半を占めていた。
 「これ以上、運休が続けば、経営に影響が出かねない」。社員の出張記録をチェックし、須賀川市の山本電気総務課長の山ノ内栄一(60)は顔をしかめた。自動車の空調機器や掃除機のモーター製造を手掛け、年商は約60億円。鋼材やネジなどの資材のほとんどは、中国から調達している。納期交渉のために現地に赴くこともしばしばだ。
 毎月、上海に出向く社員は羽田空港からの上海路線で急場をしのぐ。「福島空港までは車で15分だったのに...。羽田までは半日を要する」。交通費や宿泊費がかさむ上、空港までの移動時間が重くのしかかる。「経費はなんとかなるが、失った時間の大きさは計り知れない」
 「福島空港は企業活動に欠かせない」。県上海事務所長の国分健児(43)には、空路を絶たれ、成田空港や羽田空港の利用を余儀なくされている本県事業者の悲鳴が相次ぐ。国分は企業の要望に応えることができず、途方に暮れる。今月上旬、上海市のスーパーに設けられた県産食品ブースの3月と4月の売り上げデータを見て、がく然とした。「3分の1じゃないか」。商品は震災前に納入され、放射性物質は付着していない。「これが今の本県への評価なのか」
 韓国、中国は自国民に対し、本県への立ち入りを自粛するよう呼び掛けている。中国東方航空の担当者は「原発事故が収束したとしても、中国政府が自粛を解除しない限り、運航はできないだろう」と漏らす。「長い時間を掛けて築き上げた経済の結びつきが水の泡になろうとしている」。国分は危機感にさいなまれている。(文中敬称略)

※●は倶の旧字

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