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全頭検査 課題は多く

全頭検査の実施を求める発言が相次いだ全国肉牛事業協同組合県ブロック会議。出荷停止を目前にして畜産農家の苦悩は深まる

 「思い切った手段を取らなければ本県産牛肉に対する信頼は戻らない。検査した牛肉以外は絶対に流通させないという強い姿勢を示すべきだ」。1300頭の肉用牛を育てる小野町の長谷川栄伸さん(56)は訴えた。
 18日、県産牛肉からの放射性セシウム検出などを受け、西郷村で急きょ開かれた全国肉牛事業協同組合県ブロック会議。19日にも実施される県内肉用牛の出荷停止を前に、出席した畜産農家には危機感が漂う。「いつまで続くのか」。1日も早い出荷再開のために、出荷肉に含まれる放射性物質に関する全頭検査を望む声が相次いだ。
    ◇  ◇
 県内の畜産農家の間で高まる全頭検査への要求。だが、県幹部の1人は「そう簡単な話ではない」と実情を明かす。
 検査は牛の解体後に各頭1カ所の肉を検体にする方法で行う。しかし、県内で唯一、肉用牛を解体している郡山市の県食肉流通センターの解体能力は1日36頭で、年間にして約8000頭。県内の肉用牛を全て検査するには年間約2万頭を解体しなければならないが、到底無理だ。これまで県内肉用牛の9割は県外で解体されていた。放射性物質の問題で県外施設での解体は難しくなった。解体場所の確保が課題となる。
 解体できたとしても、放射性物質の測定器がある郡山市の県農業総合センターで実施している検査が追い付かない。同センターで放射性物質の検査ができるのは1日、100検体だが、他の農産物の検査も行わなければならないという。
 県は全頭検査を、計画的避難区域と緊急時避難準備区域の農家に加え、放射性セシウムを含む稲わらを牛に与えていた農家の合わせて約60戸から出荷される肉用牛に限定する方針を示した。稲わらの問題がない農家については初回出荷分のみ検査する考えだ。
 県農林水産部の田村完次長は「全農家を対象にした全頭検査をする必要は認めるが、県だけでは限界がある。国の責任で他都道府県の協力が得られるように働き掛けてほしい」と訴えた。
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 県が全頭検査に踏み切れない中、県内小売業で県内産牛肉に厳しい視線が注がれている。スーパーのいちい(本社・福島市)は17日、店頭販売する牛肉を本県産から北海道産に切り替えた。同社は地産地消を売りにしているが、担当者は「この状況では売れない。販売再開には全頭検査をして消費者の信頼を得ることが前提だ」と言い切る。
 出荷停止を目前に控えた県内畜産農家。全頭検査のめどが立たず、先が見えない飼育を強いられ、苦悩はさらに深まっている。

カテゴリー:福島第一原発事故

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