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今を生きる 万感、つないだ伝統 仲間の思い胸に 相馬三社野馬追

杯を手に観客と交流する牛渡北郷騎馬会長

 福島県相馬、南相馬両市で23日に開幕した「相馬三社野馬追」では、出場した騎馬武者たちと市民らの祭りへの熱い思いが一つになった。両市ではそれぞれ宇多郷、北郷の出陣式や騎馬行列などが行われ、仲間や馬を津波で失いながら出場した騎馬会関係者は万感の思いを募らせた。大勢の観客が詰め掛け、苦難を乗り越えてつながれた一千有余年の伝統に惜しみない拍手を送った。


■北郷騎馬会長 牛渡康光さん(67)
 「飢饉(ききん)でも戦争でも途切れなかった歴史をつなぐことができた」。23日、北郷騎馬会長の牛渡康光さん(67)=南相馬市鹿島区江垂、永光食品社長=は、「違い棒」の旗印を背に芦毛(あしげ)の愛馬に乗り、堂々の出陣をした。

   ◇   ◇

 東日本大震災の日、真っ黒な海水が海岸から3キロも離れた自宅に押し寄せた。目の前を船が流されていき、慌てて家族と近くの高台に避難した。100メートルほど海岸寄りにある真野小が盾になり、自宅の被害は免れた。
 だが、騎馬会員約90人のうち3人の命が奪われた。会員の家族10人余が犠牲になり、今も行方が分からないままの人もいる。野馬追に欠かすことができない馬は16頭が津波にのみ込まれた。
 東京電力福島第一原発事故が追い打ちを掛けた。避難者が相次ぎ地域が混乱する中、祭りの期日が迫っていた。「こんな時にできるわけがない」「殿様がやるというなら出るべきだ」。当初、騎馬会内の意見は割れた。
 底を突いていた馬の飼料がNPO引退馬協会から届き、義援金も相次いだ。「後ろ向きではいけない」。全国からの励ましが騎馬武者の野馬追への情熱を呼び覚ました。

   ◇   ◇

 小学生の時から45回目の出場のベテランが率いた騎馬数は、41騎と昨年の92騎の半分にも満たなかった。「出場できない仲間の思いを背負って出場した」。観客とも喜びを分かち合った。南相馬市内を行列した後、自宅に凱旋(がいせん)し、充実感を漂わせた。
 牛渡さんは再び三社五郷がそろって開催できる日が早く来ることを願う。「野馬追を守り伝えていくのが、われわれの務めだから」

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