東日本大震災アーカイブ

絆探して(17) 帰郷まで歴史つなぐ 富岡の4小中校、三春に開設

富岡町の小中学校開設の説明を聞く保護者=郡山市・ビッグパレットふくしま

 児童、生徒の保護者200人余りで埋まった会場は期待と不安が交錯した。10日に郡山市で開かれた富岡町の小中学校開設の説明会。富岡町の庄野冨士男教育長は、夏休み明けから三春町に設ける新しい学校のいきさつを語り、保護者の疑問に答えた。富岡一小、二小、一中、二中の4校の教職員が紹介されると、会場の雰囲気が和らいだ。

■全国700校に分散
 原発事故で立ち入り禁止の警戒区域となった富岡町は、郡山市に役場機能を移した。
 避難先での学校開設を求める要望は出ていたが、町教委は当面、児童・生徒がそれぞれの避難先の学校で学ぶ「区域外就学」を選択した。2つずつある小中学校の児童、生徒約1420人の就学先を把握できたのは事故から2カ月が過ぎた5月中旬。県内、県外にほぼ半数ずつ、約700校に散り散りになっていた。
 5月末、県教委は町教委に「学校が存続しなければ、教員配置ができない」と伝えた。町出身で文部科学省の清水潔事務次官のアドバイスも受け、学校開設を探った。
 町教委は当初、郡山市と三春町への開設を予定していたが、郡山市への設置は土地、建物の交渉がまとまらずに断念した。7月上旬には保護者の意向を聞いた。約70人が新設する学校への転校を希望し、迷っている保護者は300人以上いた。
 郡山市に避難している青田寿美恵さん(46)は双子の小3きょうだいを、新設する学校に転校させる予定だ。「知っている先生がいて、子どもも安心。目の行き届いた教育も期待できる」と歓迎する。市内の仮設住宅に暮らす父・青戸可一さん(83)作詞の富岡二小校歌が歌われる日を楽しみにしている。
 同じく市内に避難している大井川洋之さん(50)は子どもたちの意思を尊重し、中3の長男と中1の長女は引き続き市内の学校に通わせ、小6の次女は町開設の学校に転校させる考えだ。

■地域のシンボル
 夏休みに入り、町小中学校設立検討委員会(設立準備会)の会議が繰り返し開かれ、カリキュラムや机、ロッカーなど学用品の準備を進めている。8日には教員の兼務辞令が解け、校長、教頭らを含め37人が「町の先生」になった。
 原発事故の収束時期や帰郷までの道筋は見通せない。町教委は「故郷を想う心」と「友を想う心」を育む教育を、新たな教育目標に掲げている。庄野教育長は「学校は地域のシンボルであり、子どもたちが町に戻る日まで歴史をつながなければ...」と力を込めた。

カテゴリー:連載・原発大難