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絆探して(22) 住民思い川内守る 避難続く村の駐在所警察官

避難している住民の要望や不安に応える川内駐在所の渡辺さん(右)=郡山市の仮設住宅

 双葉署川内駐在所の巡査部長、渡辺秀作さん(33)が受け持つ川内村は、村民約3000人のうち、9割強の約2800人が村外に避難している。「村民全員が帰ってくる日のために村を守る」。渡辺さんは人けのない村内でパトロールを欠かさない。
 東京電力福島第一原発事故で村内は緊急時避難準備区域(村民約2640人)と、警戒区域(同約350人)に指定された。事故から半年が過ぎる来月上旬、緊急時避難準備区域が解除される見通しだ。
 双葉署は今月8日、住民の帰郷に備え、田村市常葉町の旧山根小に警察官約50人の新たな拠点を設けた。仮庁舎が入っている川俣町の福島署川俣分庁舎に比べて、所轄の双葉郡に格段に近い。川俣町から川内村までは車で片道約2時間が必要だったが、旧山根小から川内村までは30分ほどで到着できる。
 渡辺さん自身も駐在所やその周囲を清掃し、いつでも村で暮らせる準備を整えている。

■日常が一変
 渡辺さんは昨年4月に妻と長男の3人で駐在所に赴任した。村民と打ち解けるまで時間はかからなかった。巡回連絡で訪問すると、お茶を飲みながら世間話で盛り上がり、時には住民のプライベートな悩みに親身になって応じた。都市部のようなにぎやかさはないが、美しい自然、住民の人情深さと親切さが何よりの魅力だった。
 のどかな日常は原発事故で一変した。多くの住民は今、郡山市のビッグパレットふくしま脇に建てられた仮設住宅などで暮らす。渡辺さんはパトロールや行方不明者の捜索などの合間を縫い、仮設住宅を1軒ずつ訪ねている。

■相次ぐ盗難申告
 緊急時避難準備区域が解除されても、放射線の詳細な測定や十分な除染、公共施設の復旧などが進まなければ、住民は帰宅をためらう。同時に、古里を離れている住民にとって、自宅の盗難被害や村内の事件・事故の発生が大きな気掛かりだ。
 警戒区域などを抱える双葉、南相馬の両署管内は、民家や事務所などを狙った窃盗などが多発している。一時帰宅や車の持ち出しの際に、住民が被害に気付き、両署管内の申告は今月8日現在で、500件を超えた。県警は被災地での態勢を強化し、容疑者を逮捕しているが、避難が長引くにつれ、治安への期待は高まっている。
 「家は無事なのかな」。渡辺さんが仮設住宅を巡ると、質問が相次ぐ。「みんなを守るから安心して...」。パトロールで確かめた村の様子を報告し、住民の笑顔と安全な古里を取り戻すための防犯を誓っている。
(「絆探して」は終わります)

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