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【汚泥問題「限界」】 会津も発生、衝撃 国の処理法、不透明

汚泥が仮置きされたテントが並ぶ県北浄化センター。悪臭問題も深刻化している=18日、国見町

 会津若松市の地裁会津若松支部構内の汚泥から高い濃度の放射性物質が検出された。比較的、放射線量の低い会津地方も、汚泥処理問題と無縁ではないことが浮き彫りとなり、市民に衝撃を与えた。県内の下水処理施設は、さらに深刻だ。行き場のない汚泥は増え続け、新たな仮置き場を確保するための設備投資を強いられるケースも。国に対し、早期処理を求める自治体と県民の声は高まる一方だが、解決の糸口さえ見えない。

■まさか...

 「汚泥の問題は人ごとだった。身近なところが汚染されていたとは信じたくない...」。会津若松市追手町にある地裁会津若松支部の周辺に住む70代の男性は、裁判所の3階建ての建物を見やり顔をしかめた。

 支部の汚泥の放射性セシウムの濃度は、政府が遮蔽(しゃへい)管理を求める1キロ当たり10万ベクレルを大きく上回る約18万6000ベクレル。支部は県、会津若松市と協議し汚泥の処分法を協議するとしているが、名案は見つからない。

 市には「裁判所はホットスポットなのか」「鶴ケ城のお堀や自宅近くの側溝は問題ないのか」といった問い合わせが10件以上寄せられるなど、市民に不安が広がっている。

■観光に影

 観光業者は今回の問題が、原発事故の風評被害で落ち込む観光客の入り込みに影響する事態を懸念する。

 鶴ケ城本丸への登閣者は震災直後は例年の半数だったが、現在は例年の8割にまで戻ってきた。鶴ケ城を管理する市観光公社の若林時彦専務理事は「明るい兆しが見え始めてきた中、大変、残念なニュース。行政は汚泥の処理方法を決めるなど、早急に対策を講じてほしい」と訴える。

 NPO法人会津鶴ケ城を守る会は来春、市の許可を得て環境美化のため、お堀の土砂を撤去する予定だった。だが、今回の件で計画は白紙に。宮沢洋一理事長は「鶴ケ城のイメージアップの取り組みに水を差されてしまった」と悔やんだ。


搬入 厳しい住民理解 「すぐ答え出ない」園田内閣府政務官

 放射性物質を含む汚泥の搬入先の確保は、処分場周辺の住民から理解を得ることなどがネックとなり、ほとんど進んでいない。

■自衛策

 約2400トンの汚泥が仮置きされている国見町の県北浄化センターでは、仮置き場が満杯になる日が今月末に迫った。

 このため、センターを管理する県は敷地内で保管場を拡張する工事に着手した。仮置きは5月から始まったが、汚泥を運ぶ重機のリース代などで、すでに1億円の出費を強いられている。新たな設備投資で支出は増える一方だ。担当者は「処理場が見つからなければ、財政負担は増えるばかりだ。国は早急な支援策を打ち出してほしい」と注文を付ける。

 猛暑で、汚泥の発する悪臭も深刻になっている。センター近くで農作業する60代の女性は「天候によって悪臭が漂う。農作物の風評被害なども心配だ」と困惑気味だ。町職員によると、悪臭で食欲がなくなり体調を崩した住民もいるという。

■健康は?

 郡山市の県中浄化センターは、下水汚泥を燃やしてできる「溶融スラグ」を仮置きしている。1キロ当たり5万9000~33万4000ベクレルという高い濃度の放射性セシウムが検出されており、管理者の県はコンクリート製の遮蔽(しゃへい)場建設を9月中にも開始する。しかし、完成までには数カ月かかる見通しで、職員の一部からは施設内で働く人の健康面への影響を不安視する声も上がる。

 担当者は「汚泥処理で国には抜本的な対策が求められる」としながらも、「誰もが納得できる解決策を見つけるのは難しいだろう」と見通しを語る。

■打つ手なし

 環境省は放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下の場合、埋め立て処分が可能との判断を示している。放射線問題に詳しい専門家を講師にした住民説明会を県内各地で引き続き開催する予定で、産業廃棄物課職員は「説明に説明を重ね、処分場周辺の住民に納得してもらうしか方法はない」と苦しい胸の内を明かす。

 原発事故担当の園田康博内閣府政務官は18日の福島民報社のインタビューで、汚泥問題の対応に苦慮している現状を率直に認めた。「難しい問題だ。知恵を絞っているが、すぐには答えが出ない。処分先となる管理型施設の安全性や国の財政措置を住民に理解してもらうのに全力投球する」と、自らを鼓舞するように言葉をつないだ。

【背景】
 地裁会津若松支部の敷地内の側溝清掃を請け負った業者が今月8日、雨水枡(ます)から採取した汚泥の放射性物質調査を検査機関に依頼。11日になって、福島地裁に汚泥1キロ当たりの放射性セシウムが約18万6000ベクレルだったとの報告が届き、会津若松支部は雨水枡周辺を立ち入り禁止とした。裁判事務に影響は出ていない。一方、県内の県や市町村が管理する62カ所の下水処理施設に仮置きされた放射性物質を含む汚泥は1日現在、計8300トンに上っている。

園田康博政務官に聞く
  浄化態勢整備は前進 福島第一原発

IP110818TAN000187000_00.jpg 福島第一原発事故対策で政府と東京電力の間で調整役を担う園田康博内閣府政務官(原発事故担当、衆院岐阜3区)は18日、福島民報社のインタビューに応じ、前日に改定した収束に向けた工程表のポイントなどを語った。

 -ステップ2に入ってからの1カ月間の総括は。

 「目標である原子炉の冷温停止のためには滞留水を減少させ、注水量を増やさなくてはならない。汚染水浄化システムの安定化が欠かせないが、従来のシステムの他に国産のセシウム吸着処理施設が動きだした。これによりバックアップ態勢が整ったことが、今回の改定で最大の前進だ」

 -放射性物質の放出量は事故当初の約1000万分の1に相当する毎時約2億ベクレルとしたが。

 「これは暫定値で、最大に放出していた場合を想定したものだ。実測値はもっと少ないだろうと予測している。来月の工程表見直しの際には実測値を示せるように努力したい」

 -警戒区域と計画的避難区域で除染モデル事業が始まる。

 「環境省や農林水産省などの関係省庁が個別に検討していた除染作業を放射線量の高い複数地域で試すものだ。公園や農地、学校などのさまざまな場所で、どんな手法が最も効果を発揮するかを把握したい。好結果が出れば、すぐにでも地元自治体と協議して本格実施に移ることも可能だ。効果がなかった場合は、新たな手法を考えたい」

カテゴリー:3.11大震災・断面

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