東日本大震災アーカイブ

今を生きる 父にささげる決意 目標の保育士へ一歩

相馬市の慰霊祭で別れの言葉を述べた彩音さん

■相馬の慰霊祭 阿部彩音さん
 「地域のために最後まで力を尽くした父を誇りに思う」。相馬市の磯部中2年阿部彩音さん(14)は津波で殉職した消防団員の父健一さん=当時(39)=に語りかけるように言葉をつないだ。10日、相馬市で営まれた慰霊祭で遺族を代表して別れの言葉をささげた姿には、前を向いて生きる決意がにじみ出ていた。

■消防団副分団長、避難誘導中に殉職
 漁師だった健一さんは長年、消防団の活動にも力を注いできた。震災発生時は市消防団第9分団副分団長として、先頭に立って住民の避難誘導に当たり、活動中に命を失った。
 市内磯部にあった自宅も津波で失った。今は母の美香さん(41)、妹の穂波さん(12)=磯部小6年=と市内の仮設住宅で暮らす。震災直後は大好きだった父がいない生活が信じられず、気持ちが沈む日が続いた。
 7月に市の震災孤児支援金の支給式に臨んだ。市内だけでも親を失った子どもがたくさんいることを知った。「自分だけじゃない。悲しくても、父の死を受け入れなければ」と思った。それから少しずつ自分が強くなっていくように感じられたという。美香さんは「自分も忘れられないし、忘れる必要もない。ただ、少しずつでもしっかりと成長していってほしい」と優しく見守る。
 「しっかりと勉強して目標の保育士になりたい」。一歩を踏み出した少女が誓った言葉は、地域の再生を願う多くの参列者の胸に響いた。

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