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【原発事故賠償1】被災者東電に不信感 手続き複雑「冷たい」

東電から送られてきた資料に目を通す清水さん夫婦=福島市

 東京電力福島第一原発事故の被災者の多くが、東電が示した賠償請求手続きの複雑さに憤慨する。膨大な資料は読み解くのも、ひと苦労だ。今月から本格化した本賠償請求。賠償内容とその手続きは窮状に即していると言えるのか-。被災者に不満が渦巻く。

■膨大な資料

 「誰かにお金を払ってでも書いてもらいたい」。福島市の松川工業団地に設けられた飯舘村の仮設住宅に暮らす清水利一さん(78)は東電から届いた賠償請求の資料を手に、ため息をつく。

 清水さんは妻美和子さん(77)と共に届いた封筒を開けるなり、すぐに閉じた。案内書だけで160ページに及ぶ資料にどう手を付けていいか分からなかったからだ。放っておくわけにもいかず、再び取り出し、氏名欄に自分の名前だけ書いた。

 原発事故後、栃木県鹿沼市、いわき市、猪苗代町などを転々とした。7月下旬にようやく現在の仮設住宅に落ち着いた。その間掛かった費用の領収書は持っていない。書類には避難のため支出した経費の領収書を求める項目がある。「いまさら領収書と言われても...。金額が減るのはつらいが、生活できる分だけでも支払ってほしい」と言葉を絞り出す。

 村社会福祉協議会によると、仮設住宅に入居する被災者の多くが65歳以上の一人暮らしか、子どもと別々に暮らす夫婦だという。職員は「難解な書類を読み解いて、記入できる人は少ないのではないか」と明かす。

■各地で説明会を

 いわき市中央台高久にある楢葉町の仮設住宅。「着の身着のままで避難した時の領収書はない」「書類は難し過ぎる」。23日、視察に訪れた民主党の樽床伸二幹事長代行に対し、町民からは賠償請求の資料について多くの苦情が寄せられた。

 全国に散った避難者への対応も課題だ。双葉町から福井県坂井市に避難している川崎葉子さん(60)は「県民は沖縄から北海道まで避難している。各地で説明会を開くべきだ。東電は被災者としっかり賠償手続きについてキャッチボールしてほしい」と訴える。

 東京都港区に設けられた賠償手続きのコールセンターには電話184台が並ぶ。賠償担当者が延べ300人態勢で相談を受ける。

 賠償の本格化に合わせ、要員を1200人から10月に6500人に増員する。避難区域を中心に14市町村に相談窓口を設置し、職員が常駐する。しかし、ほとんどが10月までの期間限定だ。

 東電は賠償請求の手続きについて、自社のホームページでも広報するとしているが、パソコンを使い慣れない高齢者らは途方に暮れるばかりだ。きめ細かさ、温かさに欠く対応、との指摘もある。

東電、指針「盾」に防戦 県怒り「改定させる」

 東京電力は21日、法人と個人事業主に対する算定基準を公表した。8月末に出した個人向け算定基準と同様、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に基づくと強調。中間指針を「盾」にする東電と、あくまで「参考資料」とする県との思惑は、平行線をたどる。

■主張は平行線

 皷(つづみ)紀男副社長は21日、福島市の県自治会館で賠償金支払いの日程と算定基準を発表した後、県庁に松本友作副知事を訪れ、原発事故についてあらためて謝罪した。

 松本副知事は怒りの表情を浮かべながら、「中間指針に引きこもるのではなく、誠意を持って対応してほしい」と強い口調で迫った。

 背景には、西沢俊夫東電社長の発言がある。「中間指針に基づき公平公正に行う」。二日、東京の東電本店で面会した時の一言だ。

 県幹部は「東電にいくら賠償対象の範囲を広げてくれと交渉しても、中間指針に沿った内容と言うばかりで、らちが明かない。文科省に働き掛けて、中間指針を改定させるしかない」と明かした。

IP110923MAC000006000.jpg【背景】
 東京電力福島第一原発事故の被災者が東電に賠償請求する際の流れは【図】の通り。請求者は項目ごとに必要書類を付けて請求書を提出する。初回の賠償金支払いは、事故発生日の3月11日から8月31日までの損害が対象となる。東電の算定基準に不服があれば原子力損害賠償紛争解決センターに和解・仲介を申し立てることができる。弁護士ら仲介委員による和解・仲介交渉が決裂した場合、裁判所に自ら提訴する方法がある。

小川敬雄氏インタビュー 東電福島原子力補償相談室長

IP110923TAN000136000_00s.jpg 東電の賠償責任者である小川敬雄福島原子力補償相談室長は福島民報社のインタビューに応じ、「中間指針は賠償のよりどころである」と強調した。

 -賠償算定基準はどのように決めたのか。

 「原子力損害賠償紛争審査会が決定した中間指針をよりどころとしている。公正中立な法律の専門家で構成する審査会が審議を重ねて決めた指針を重視している」

 -自主避難者は対象となっていないが。

 「避難区域に近い人でも避難しない人がいれば、遠くに住んでいても避難する人がおり、法的な判断が難しい。審査会の推移を見て、しっかり対応する」

 -3カ月ごとの支払期間は長過ぎるとする声が多い。

 「個人は、仮設住宅に移る7月から8月にかけて仮払いをした。支払い対象が40万~50万件を想定している。人員体制を強化しているが、毎月支払うのは厳しい」

 -精神的損害に対する賠償金額が9月分以降、半額になるのはなぜか。

 「審査会の第二次指針追補と中間指針に盛り込まれた。審査会の結論に沿った公正な賠償と認識している」

 -全国各地に避難している県民にどう対応するのか。

 「これまで2度の仮払いで県外避難者のかなりの所在を把握している。十月一日には仙台市に東北補償相談センターをつくり、避難者が多い宮城、山形に対応する」

 -中間指針が金科玉条となっていないか。

 「中間指針は妥当性があると考える。指針が見直されれば、場合によっては算定基準を見直すこともある。柔軟に対応していく」

【写真】中間指針が賠償算定のよりどころと述べる小川氏

カテゴリー:3.11大震災・断面

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