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【原子力被害基金創設見送り】「県民の苦しみ忘れたか」 「政争の具」と批判

 原子力被害応急対策基金の創設をめぐっては、法案を提出した野党側と、復興基金での一本化を目指す与党側による関係省庁も巻き込んだ思惑が交錯している。関係者からは「原発事故の被災者支援の取り組みが政争の具になった」との批判も吹き出す。

■食い違い

 基金の創設を柱とした原子力事故被害緊急措置法の7月下旬の成立直後から、県内部に戸惑いが広がっていた。

 自治体が基金を設け国が財政支出する枠組みだが、窓口がどの省庁か分からない。国は8月に開いた被災県の職員向け説明会で、文部科学省と内閣府が担当することを伝えたとしているが、県財政課は「そんな話は聞いていない」と主張し、言い分は食い違う。担当省庁が不明のため、基金創設に向けた国への要望が文科省と内閣府の担当者に直接伝わることはなかった。

 双葉郡内の首長の1人は「法律で制度化されたのに(基金が)設けられないのは納得できない」と不満をあらわにする。県の担当職員は「財務省が予算を惜しんでいるから担当窓口を教えなかったのだろう」とも勘繰る。

■刺し違え

 緊急措置法の発議者となった本県関係の国会議員は「国も県も、本当に基金をつくる意思があったのか」と疑問を投げ掛ける。

 野党五党が共同提出した同法は、新設する機構を通して東京電力に資金を投入し、賠償金の支払いを確実にする政府提出の原子力損害賠償支援機構法と同時期に国会で審議された。衆参で与野党の勢力が逆転するねじれ状態の中、原発事故の賠償をめぐる両法案は、いわば「刺し違え」の形で成立したと複数の国会関係者が明かす。

 発議者となった別の国会議員は「野党提出の法律に、そっぽを向くよう民主党が政府に働き掛けたのだろう。基金ができる可能性は最初から低かった」と解説する。

■代替基金

 応急対策基金の創設が見送りになったことを踏まえ、県は2兆円規模の復興基金の創設を国に強く求めている。野田佳彦首相も前向きに対応する方針を示す。ただ、県の要求通りの予算を確保できるかどうかは不透明だ。

 県は、再生可能エネルギーの導入促進や公共施設の防災機能強化など「復興ビジョン」の事業を具現化するための必要額を算出し、国に要望した。本県関係の民主党国会議員は、復興基金向けの財源が第3次補正予算案の柱になるとの見通しを示すものの、「一定期間で使い切ることができるかどうか精査する必要がある。金額は県の要求を大幅に下回るだろう」と厳しく見積もる。県がこれまで国に求めた校庭の表土除去や、県民健康管理調査の費用についても満額は確保されなかった。

 県幹部は本県の基金創設を認めた場合、岩手、宮城両県からも同様の要望が出ることを国は懸念していると分析する。「原発事故から半年が過ぎ、霞が関では県民の苦しみが忘れ去られようとしているのか」と危機感も抱く。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故の賠償を円滑に進めるため、7月から8月にかけ2つの関係法が成立した。政府提出の原子力損害賠償支援機構法は新設する原子力損害賠償支援機構を通じて東電に資金を投入、同社の破綻を回避した上で賠償金の支払いを確実にするのが狙い。野党五党による原子力事故被害緊急措置法は、国が賠償金を立て替え払いするのが目的で、自治体が原発事故対応の応急的事業を実施するため基金を創設できる内容も盛り込まれた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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