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「除染は」不安消えず 避難準備区域30日解除 住民受け止め複雑

緊急時避難準備区域解除に備え、区域内の保育園で遊具を除洗する職員ら=26日、南相馬市原町区

 かつての安全・安心な暮らしは取り戻せるのか−。東京電力福島第一原発事故に伴う緊急時避難準備区域の解除日が明らかになった26日、各地に避難している住民は除染やインフラ復旧など待ち受ける多くの課題に対し消えない不安を口にした。古里に戻った後のやりくりへの懸念も尽きず、「解除ありきの対応では」との疑問も上がる。帰還への一歩と喜ぶ声がある一方で、住民の受け止め方は複雑だ。

■生活 「先の見通し示して」

 「いくら解除されても、耕作できる状態に戻してもらわなければ生活できない」。すでに区域内の田村市都路町の自宅に戻っている農業松本道男さん(66)の表情は晴れない。

 コメの作付け制限を受け、自慢の水田は雑草に覆われている。来年に備え、除草機械を購入したが、作付け制限が取り払われるめどは立っていない。「来年も作付けできなかったら、田んぼはどうなるのか」と話し、解除と同時に先々の見通しを示すよう訴える。

 住民が古里に戻るには医療体制を整える必要もある。川内村は、郡山市に置く役場機能を来年3月中に村内に戻すのに合わせ、村内の診療所を再開する計画だ。ただ、震災前は専門的な診療を受ける場合、村民の多くが警戒区域となっている富岡町内の医療機関を利用してきた。郡山市に避難する同村の井出マツヨさん(85)は「診療所が始まっても、万一の時はどうするのか心配。家には帰りたいけど難しい」と肩を落とす。

 各市町村とも本格的な除染はこれからで、いわき市の仮設住宅で長女(4つ)、長男(1つ)と暮らす広野町の女性(34)は「帰るなんて考えられない。まずは住宅街を中心に除染を進めるべき」と求めた。


■教育 子どもの被ばく心配

 南相馬市原町区の原町聖愛保育園は解除に備え、園庭の遊具の除染作業を進め、今月中には園庭の表土除去を含め除染が完了する見通しだ。

 これまで区域内での保育は認められず、他の民間保育園と合同で区域外の市内鹿島区に臨時保育園を開設して対応してきた。ようやく再開できるようになり、園長の遠藤美保子さん(59)は安堵(あんど)するが、「保護者に放射線への不安がある中、園児がどれだけ戻るだろうか」との思いも口にする。

 一方では、仕事を持つ母親らから再開を求める声も出ており、「大人が安心して働ける環境づくりも進めてほしい」と語る。

 「子どもの被ばくが心配で、解除されただけでは戻る気になれない」。区域内の田村市都路町から市内の区域外に避難する主婦千葉亜紀子さん(42)は胸中を明かす。長男が通う都路中は区域外の仮校舎で授業をしている。解除により元の校舎に戻ることになるが、「しっかりと除染して安全が確認されるまでは今の仮校舎を継続してほしい」と望む。


■商業 「商売成り立つのか」

 いわき市の借り上げ住宅に家族五人で暮らす広野町の女性(77)は震災前まで町内で理髪店を営んでいた。現在は休業中で、解除されれば営業を再開したい気持ちはある。ただ、店舗は震災で半壊し、多額の修繕費が必要だ。「日常生活を送れる環境こそが必要。住民が戻らなければ、苦労して再開する意味がなくなる」と話す。

 川内村商工会長で旅館業の井出茂さん(56)も「村に住民が戻らなければ商売は成り立たない。かといって、店が開かないと村民は戻らない」と、先が見通せない現状に悩む。


■事業者 「すぐにでも操業再開」

 「解除されればすぐにでも操業を再開する」。楢葉町の楢葉南工業団地に鉄筋加工などの工場を構える渡辺興業社長の渡辺征さん(68)は意気込む。

 区域内にある工業団地は震災で上下水道が破損したままで、道路の一部には亀裂がある。除染もまだ手付かずの状態で操業に向けた課題は少なくない。それでも必要な水は自前で調達し、従業員に線量計を持たせるなどして対応する考えだ。

 町商工会長として町の復興に対する思いは強い。行政に十分な除染などを求める一方で「まず働く場所をつくることが重要。少しずつでも前に進まなければ」と強調した。

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