東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【福島競馬開催中止】県都経済に打撃 年間数億円損失か

今年の開催が全て中止になった福島競馬場=28日

 県都の呼び物「福島競馬」の開催中止が地域経済に大きな打撃を与えている。福島市は日本中央競馬会(JRA)からの寄付金が大幅減となり、周辺の道路整備事業に遅れが出る見通しだ。駐車場収入で生計を立てていた市民やタクシー業界も苦境にあえぐ。福島競馬場は来年春の再開に向け、スタンドの補修工事と東京電力第一原発事故による放射性物質の除染作業を進めているが、「ファンは戻って来るのか」と懸念する。

■税収減

 福島競馬場の平成22年の入場人員は約28万人で、場内発売金は約69億円に上る。市の関係者は、開催の経済効果は年間、数億円に上るとみている。しかし、今年は場内発売金はゼロ。6月25日から馬場内投票所での馬券発売を再開したが、入場人員は現在、例年の6割程度にとどまる。

 福島市にとって、日本中央競馬会から受ける「競馬場周辺環境整備費寄付金」は都市計画の貴重な財源になっている。過去3年間の売り上げや入場人員、開催日数などから算出するものと、周辺の環境整備のため事業認定を受けて交付される2種類の寄付金があるが、売り上げを基本とする寄付金は競馬場から半径3キロ以内の事業に活用できるため、市は中心市街地の道路整備事業の財源に充ててきた。

 しかし、開催中止の影響で、来年度から3年間で、売り上げから算出する寄付金が約1億5千万円減る見込みとなった。市は寄付金を活用して今年度から都市計画道路の曽根田町桜木町線(宮下町工区)と太平寺岡部線(御山町工区)の整備に着手したが、平成29年度の完成予定がずれ込む見通しだ。

 「震災の影響で来年度は個人市民税や固定資産税など税収減は確実。さらに安定した財源が減るのは大きな痛手」。市の担当者は頭を抱える。

■耐えるしか

勝負服の制作に当たる河野さん
 福島競馬場の正面入り口近くに大型駐車場を持つ自営業誉田勝利さん(60)は収入の約7割を競馬場前の駐車場収入に頼る。今年は震災から6月下旬まで収入がなくなった。馬券の発売が再開されても以前の10分の1以下に落ち込んでいる。

 しかし、駐車場の固定資産税約200万円は重くのしかかる。「今年1年は蓄えを切り崩して何とか耐えるしかない。だが、福島競馬が再開されても人は戻って来るだろうか」。先行きが見えない不安にかられる。

 タクシーやホテル・旅館などにも影響が広がる。福島貸切辰巳屋自動車は土曜、日曜日の多いときで1日約20台が競馬場と福島駅を2、3回往復していた。しかし、現在は利用者の人影はまばら。「競馬場は福島市の一大企業。中止の間は苦しくなる」と運転手は訴える。土湯温泉観光協会の池田和也事務局長は「例年、開催期間中は1日当たり約20人のファンが宿泊していた。早く再開して、観光客が訪れるきっかけになってほしい」とすがる思いだ。

 競馬場近くで大正時代から続く老舗勝負服メーカー「河野テーラー」三代目の河野正典さん(39)は3月からの勝負服の注文数が記される台帳を手に取る。例年なら1カ月で調教師らの名前で3ページ分埋まるが、今年は1ページにも満たない。「震災に加え、原発事故の影響が大きい」と分析する。

 開催時には、馬券売り、交通整理、清掃など1日数百人単位で雇用してきたが、現在は大幅に減っている。長年、馬券売り場でアルバイトとして勤めてきた伊達市の60代女性は、競馬場関係者から「今年はアルバイトを頼む予定はない」との通告を受けた。「シルバー人材センターで仕事が見つかるのか」と途方に暮れる。

■疑心暗鬼

 日本中央競馬会は来春の福島競馬開催に向け総額50億円を投じて、大震災で損傷したスタンドと電算システムの復旧、場内のコースなどの除染作業を進めている。放射線量を下げるため、7月にはコースの芝を張り替えた。10月には、ダートコースの砂を全面入れ替える計画だ。除染の費用については、賠償の対象になるかどうか見極めた上で、東京電力に請求することも検討している。

 福島競馬場は定期的に場内の放射線量を測定し、数値を掲示している。競馬場屋外の放射線量は6月には場内広場の芝で最高で毎時3.1マイクロシーベルトの地点があったが、現在は毎時0.6マイクロシーベルト前後まで下がった。

 しかし、再開後に来場者が戻って来るかどうかは不透明だ。田辺彰総務課長(44)は、場外馬券売り場の横に張り出した競馬場内の放射線の値を見ながら「どれだけ下がれば、ファンは安心するのか」と気をもんでいる。

【背景】
 東日本大震災の影響で、福島競馬場の4階から6階にかけてのスタンドの天井の一部が落下した。計算機などのシステムも故障し馬券発売が困難として、日本中央競馬会は春、夏、秋の福島競馬の開催を中止した。1年以上競馬が実施されないのは現在のスタンド改築工事があった平成7年8月から9年6月にかけて以来。6月25日から馬場内投票所での馬券発売を再開した。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧