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【要介護認定の申請急増】定員超過で職員悲鳴 疲労の度合濃く

中通り

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震災直後から被災者を受け入れているひらたリハビリテーション・ケアセンター。4人部屋に6人分のベッドが並ぶ
 東京電力福島第一原発事故に伴い要介護者となる避難者が急増している中、定員を超えて受け入れている施設では、入所者の生活環境が悪化することへの懸念も広がり、職員は疲労の度を深める。施設の新設をしようとしても県は慎重姿勢を崩さず、関係者からは出口の見えない現状にいら立ちの声も上がる。

■野戦病院

 平田村のひらたリハビリテーション・ケアセンターには、4人用の病室に6人分のベッドが並ぶ。看護師らが手狭な病室を忙しそうに回り、高齢者の介護に当たっている。

 震災直後から浜通りの医療機関や介護施設から避難した高齢者を積極的に受け入れてきた。「入所を希望するお年寄りはできる限り来てもらえるよう努めている」と、施設を運営する医療法人誠励会の佐川文彦理事長(52)は話す。

 隣接する病院と合わせた入院・入所者は、最も多い時で定員を約160人上回る404人に上った。ベッドが大幅に不足したためリハビリ室に布団を並べ、医師、看護師らが慌ただしく立ち回る"野戦病院"さながらの状態だった。現在も避難者50人余りを受け入れており、定員超過は約40人と慢性化している。

 施設は冷涼な阿武隈高地にある。浜通りから移った患者は体調を崩しかねず、冬に備え温度や湿度の管理にこれまで以上に気を使う。

 4人用の病室に6人分のベッドを置いているため、1人が風邪などをひけば他の人にうつりやすい。病気や感染症の予防には特に注意を払っている。

■病床割り振りを

 誠励会は県などに対し、原発事故により相双地方で使用できなくなった介護用病床を中通りと会津地方に振り分けた上で、介護老人福祉施設の新設を許可するよう求めている。施設や設備などを充実させ、避難者の受け皿を広げる狙いだ。

 しかし、県は避難した住民が帰還後、施設ががら空きになる可能性があるとして慎重だ。県高齢福祉課の担当者は「地域全体の施設のニーズ、在宅支援とのバランスを考慮しなければならない」との考えを示す。

■心が折れる

 須賀川市の特別養護老人ホーム「いわせ長寿苑」の矢部周蔵施設長(59)は業務が急増したことで職員の精神的な負担が増している現状を危惧する。

 これまでの入所者とともに新たに富岡町から避難してきた12人がショートステイを利用している。

 避難者は原発事故を受け、着の身着のままで逃げてきた人ばかりだ。1日の食事時間や使用薬の記録は手元にない。利用者が施設の環境に慣れるまでには通常3カ月かかるといわれる中、精神的に不安定になりがちな高齢者もいた。どのように接したらいいのか、手探りの対応が続いた。

 職員の健康状態は定期的にチェックし、細心の注意を払っている。しかし、「そのうち職員の心が折れてしまうのではないか。それが心配だ」と、矢部施設長は職員の身を案じた。

入所者の体調管理懸念 避難の職員戻らず 浜通り

 浜通りの施設は原発事故などの影響で依然として受け入れ態勢が整わないケースが出ている。避難した職員をどう確保するのかなど平常化に向けた課題は多い。

■職員が足りない

 南相馬市原町区は、原発事故の緊急時避難準備区域の解除に伴い高齢者福祉施設に再開の動きが出てきた。しかし、職員確保が悩みの種だ。今月13日に入居者受け入れを始めた特別養護老人ホーム「竹水園」の職員は現在、55人で原発事故前より10人少ない。

 市外に避難し、そのまま再就職した例もある。看護や介護の専門的な技術を持つ職員が足りないままでは、高齢者が急に体調を崩した場合などに十分対応できない事態も想定される。多い時には1日で3件もの入所の申し込みがあるが、半杭実施設長(60)は「受け入れ態勢が100%整うまでには、相当の時間が必要になる」と覚悟する。「除染が進まない限り、市内に人が戻る動きは鈍いままだろう」。市の担当者の1人は指摘した。

■断るしかない

 いわき市のある介護老人福祉施設には、震災前の倍近くの入所申し込みがある。

 津波で家が流されたため施設での生活を迫られるケースや、原発事故で避難していた県外から県内に戻ることを希望する双葉郡の住民などが多いという。

 しかし、施設の担当者は「定員はいっぱい。お断りするしかない状況」と苦しい現状を明かす。

【背景】
 厚生労働省は東日本大震災が発生した3月11日、介護施設などで定員を超えた受け入れを認める特例措置を打ち出した。県の調べでは、県内の介護老人保健施設は10月1日現在、稼働している74施設のうち16施設で定員をオーバーしている。特別養護老人ホームは8月1日現在、稼働中の125施設のうち59施設で定員超過となっている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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