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【県議選投開票】投票所分散、長距離移動 自治体、準備手探り「想定通り進むのか」

 東京電力福島第一原発事故で避難区域になっている町村は、県議選の投開票で投票所が避難先の複数の自治体にまたがったり、遠く離れた開票所に票を運び、職員も移動させるなど異例の態勢を敷く。ただ、いくら万全を期しても「想定通り進むのか」との不安は消えず、11月20日の投票まで1カ月を切っても手探りの準備が続く。

■避難先ばらばら

 二本松市に役場機能を置く浪江町は町民の避難先が分散しているため、投票所が二本松、福島、本宮、桑折の4市町にまたがる。「ばらばらの地域に職員を配置するため、投票箱を集約する際などの交通事故が心配」と町幹部は神経をとがらせる。
 町民はどこでも投票可能で、二重投票を防ぐため投票所間の連絡体制づくりが急務となっている。また、福島市の市北信支所は避難者にはなじみが薄く、どう周知するかも課題だ。
 開票所は当初見込んでいた地元の体育館が二本松市の投票所になるため使用できず、市内の結婚式場「ウェディングパレスかねすい」となった。1階の2つの宴会場の間仕切りを取り払って使う。

■急いで運ぶ

 楢葉町は役場機能を置く会津美里町と多くの町民が住むいわき市に投票所を設け、開票作業はいわき市で行う。いわき市の仮設住宅には町民の約6割が暮らしており、できるだけ投票時間を長く確保するのが狙いだ。
 代わりに会津美里町ではいわき市より2時間早い午後5時で投票を締め切る。投票箱をいわき市に運ぶのに2時間程度かかるためで、職員14人が投票箱を持参して会津美里町から町のバスで急行する。避難する町民の数はいわき市が多い一方、職員は会津美里町に多く住む。「本来なら(役場機能がある会津美里町の)役場の近くで開票した方がスムーズなのだが...」と関係者は本音を明かす。
 双葉町は役場機能を移転している埼玉県加須市で開票する。投票所は加須市と役場支所を置く郡山市の2カ所に設け、投票箱は職員が車で約3時間かけて郡山市から加須市に運ぶ計画だ。一時は郡山市の投票締め切り時間を早めることも検討したが、県内に戻っている町民も多く、最終的に同時刻の午後6時にした。
 開票は午後11時からの深夜の作業となり、投票箱の搬送には高速道路を使う予定だ。町選管委職員は「県境を越える長距離移動だけに何があるか分からない」と気を引き締める。

■地元投票は限定的

 緊急時避難準備区域が解除された広野町と川内村では、旧区域内の町村役場にも投票所を設置する。ただ、「区域内に戻った住民はまだ少なく投票は限定的になる」とみて、広野町は避難者が多いいわき市、川内村は郡山市で開票する方針。
 警戒区域などがある他の自治体も仮設住宅の設置地域を中心に投票所を設ける考えで、富岡町は郡山、いわきの両市、大熊町は会津若松、いわきの両市、葛尾村は三春町にそれぞれ置く。計画的避難区域の飯舘村も役場機能を置く福島市内に投票所を2カ所設けて対応する。

津波、原発事故が影響 代替施設にプレハブ 手狭、職員減のケースも

 沿岸部や中通りの自治体も通常とは異なる環境の中での作業を強いられる。

■苦肉の策

 沿岸部では投票所に使う予定だった多くの施設が東日本大震災の津波の被害を受けた。いわき市は投票所に使えなくなった施設の代わりに敷地内にプレハブ小屋を建てる。「苦肉の策だが、狭い場所を効率的に使って有権者に不便を掛けないようにする」と、いわき市選管委の担当者は非常事態の対応であることを強調する。
 投票所としていた四倉中の体育館と久之浜大久地区の田之網集会所の2カ所が使用できなくなった上、近くに代替施設が見つからなかった。投票日の3~4日前には建てる。市内では他に2カ所が使えず、近隣の別の投票所を一緒に使う。
 南相馬市でも投票所6カ所が被害を受け、陸側に数キロ離れた別の投票所と統合する。相馬市や新地町でも代替施設を確保した。
 南相馬市や相馬市は有権者の利便性を考慮し、仮設住宅と投票所の間を巡回するバスを運行する計画だ。

■遅れが心配

 「開票作業に遅れが出るかもしれない」。福島市選管委の担当者は不安を漏らす。
 7月の市議選の開票所に使った国体記念体育館がスポーツ大会でふさがっていた。代替施設として選んだ市民会館のホールはこれまでと比べて手狭だ。
 作業スペースが十分に確保できないことから、開票作業に当たる職員を前回の400人から270人に減らす。これに伴い候補者名を読み取る投票用紙分類機を県議選で初めて使う予定だが、慣れない場所での予期せぬトラブルを警戒する。
 郡山市や須賀川市は従来の県議選で開票所に使用していた大規模施設が震災の影響で使えず、他の施設の利用を迫られている。

■多くの問い合わせ

 市町村の戸惑いを反映し、県選管委事務局への問い合わせも従来の県議選よりも多く寄せられている。県選管委の担当者は「平時と異なる慣れない作業をしている市町村選管委の支援に全力を挙げたい」との考えを強調する。
 国を通じて県外の職員を双葉郡などの自治体に派遣しているが、今後必要になれば、他の自治体への県職員の派遣も検討するという。

【背景】
 4月の統一地方選で行われる予定だった県議選は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を受けて延期された。統1選延期を定めた特例法の期限は9月22日までだったが、県選管委は再延期を総務省に要請した。これを受け、12月31日までの再延期を認めた特例改正法が成立し、県選管委は日程を決めた。公職選挙法で県議選は県選管委が管理することになっているが、投開票事務は市町村選管委が実施すると定められている。

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