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今を生きる 被災児童預かり 強まる絆

一緒に夕食を作る明日香さん(左)と斎藤さん

■喜多方・在宅歯科衛生士 斎藤久美子さん
 「久美子さん、ケチャップ入れていい?」「ちゃんとかき混ぜてからね」。香ばしい匂いに包まれた台所で会話が弾む。いたずらっぽい笑顔と優しいまなざし。2人で夕飯を作る時間が何より楽しい。喜多方市の在宅歯科衛生士斎藤久美子さん(49)が緊急時避難準備区域だった南相馬市原町区の小学4年生田村明日香さん(10)を預かって半年がたった。
■笑顔で夕食作り 避難所で出会い、半年生活
 出会いは避難所だった喜多方市の押切川公園体育館。避難者に歯磨き指導をしていた斎藤さんは「歯が痛い」という明日香さんに「仕上げ磨き」をしてあげた。
 人懐っこい明日香さんと会うのが毎日の楽しみになった。3月下旬、明日香さんは父親(58)と一緒に東京の避難所に移った。父親からお礼のメールが届き、今後もつながりを持てると安心した。
 明日香さんの誕生日だった4月16日、父親から「仕事の都合で明日香と一緒に暮らせなくなった」と電話があった。笑顔が浮かんだ。寂しい思いはさせたくない―。斎藤さんは自宅で預かる提案をした。翌日、再び電話がきた。「お願いしてもいいですか」。明日香さんも斎藤さんに会いたかった。
 4月18日、斎藤家で誕生会が開かれ、新しい家族を温かく迎えた。最初は気を使っていた明日香さんも徐々になじんできた。週に2、3回、明日香さんが好きなカボチャの煮っ転がしなどを一緒に作る。
 「家に帰らなきゃいけないの?」。9月30日、緊急時避難準備区域の解除を知った明日香さんは聞いた。斎藤さんはつぶらな瞳を見詰め、「ここにいていいんだよ」と優しく語り掛けた。
 共に生活できるのは明日香さんの父が退職するまでの2年間。「今、この子を育てられるのは自分だけ」。斎藤さんは強い信念を持ち、明日香さんとの絆を強めている。

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