東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【県内大学生就職戦線】 内定もらえない 震災、原発事故で出遅れ、教員採用中止響く

就職ガイダンスで企業面談に臨む大学生(右)。企業の担当者の話に真剣な表情で耳を傾ける=21日、福島市

 就職を希望する県内大学生の内定率が低迷している。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で、就職活動の出足が遅れたり、県内で来春の小中学校教員の採用が見送られたりしたことなどが影響しているとみられる。福島大は10月の下旬になっても内定率が5割に届かず、県内の他大学も低水準で推移しているという。決まらない就職先に大学生の間には悲愴(ひそう)感さえ漂い始めている。大学側は交通費の一部支給を始め、企業説明会の追加開催を検討するなど支援に懸命になっている。

■深まる悩み

 「徐々にプレッシャーを感じている」。福島大人間発達文化学類4年の女子学生(22)は悩む。昨年11月から就職活動を始め間もなく1年。18社を受験したが、希望する企業に内定が決まらない。

 震災後、困っている人のために働きたいと避難所でボランティアに汗を流した。5月末から就職活動を再開したが、2カ月半の空白期間の影響は想像以上だった。震災前の面接の感覚が取り戻せず、採用に至らない。「もう少し面接の練習をしておけば良かった」と後悔が募る。「両親をこれ以上、不安にさせたくない」。27日にある志望企業の最終面接に向け気を引き締めた。

 21日に福島市で開かれた市就職ガイダンス。冬には3年生の就職活動が始まるだけに4年生の顔には焦りの表情が浮かぶ。

 伊達市出身の大学4年の女子学生(22)は震災後、古里で復興のために働きたいと決意。県内を中心に30社を受けたが内定はない。「中小企業が多く、採用枠が限られる。卒業するために卒論も書かなければならない時期なのに...」とつぶやいた。採用担当者の話に真剣に耳を傾けていた福島学院大短期大学部の女子学生(19)は昨年9月から活動している。「卒業までに決められるのか」と不安な表情を見せた。

 今春卒業者の就職率がここ10年で最低の86・2%だった福島大の南俊二就職支援室長は「現在集計中だが、昨年同期で6割だった内定者は5割に満たない」と嘆く。

 他大学も苦戦が続く。今春の卒業生の就職率が過去最低の91・2%に落ち込んだ会津若松市の会津大は、内定率が昨年同期と同様の6割強にとどまる。いわき市の東日本国際大も昨年と同じ6割程度。今春の就職率が77・8%だった同市のいわき明星大は前年同期を下回っている。

首都圏で教員合格 「素直に喜べない」

 東京電力福島第一原発事故による来春の県内小中学校の教員採用の見送りも、教員志望の4年生を悩ませた。

 福島大によると同大の教員志望者は例年と同数の約100人。県内小中学校の志望者はいずれも「県外でも教員になりたい」と他都道府県の採用試験を受けた。同大4年の男子学生(22)は首都圏の試験を受験。合格したが「模擬授業の試験は教科や時間が違い対策の変更を迫られた。本県の教員になりたかったので素直には喜べない」と複雑な表情を浮かべた。周りにはまだ採用が決まらない友人もいるという。

■初の年明け説明会

 内定率の低下を受け、各大学は就職支援に懸命だ。福島大は今年、震災による学生の負担軽減を図るため、就職試験を受ける学生の交通費を片道3000円、計4回まで補助する制度を始めた。さらに「年明けとして初めて」(同大担当者)という4年生対象の企業説明会を来年1月に開く方向で検討している。

 会津大は就職率の低下傾向に歯止めをかけるため、就職活動を終えた4年生が3年生に経験談を伝える就活カフェを新たに開く。いわき明星大も保護者にフリーペーパー「就職情報定期便」を送り、学生の就職活動を促してもらう作戦を取っている。

■ミスマッチ

 一方、被災地の学生を支援しようと採用を拡大する動きもある。今春118人を採用した幸楽苑(本社・郡山市)は東北地区を中心に約140人に内定を出した。現在も募集中だ。福島銀行(本店・福島市)は地域貢献策として今年度初めて秋の追加採用を実施している。

 福島大就職支援室には、被災地の就職を支援したいと全国の中小企業を中心に求人票が数多く届き、総数は昨年度1年間の総件数1600件を超えた。県内ハローワークの来春大学卒業予定者の求人数は8月末で、1926人で前年同期比108人増えていた。

 ところが、求人数が増えても学生の希望に合わないミスマッチという課題も横たわっている。

 福島大の担当者は「県外企業は地元志向の強い学生の希望に合うケースが少ない。また、県内だからといって希望職種が合わない場合もある。求人数を就職には結び付けたいが難しい」と頭を抱えている。

【背景】
 大学生の多くは3年生のうちに、就職情報会社の説明会に参加するなどして企業に関する情報収集を始める。大企業は例年、4月ごろから4年生らを対象に面接などの選考活動を始めるが、今年は東日本大震災の影響で、日程変更が相次いだ。採用に関する経団連の倫理憲章は、内定の「解禁日」を10月1日としているが、外資系など独自の日程で選考を実施しており、9月までに内定を出す企業は多い。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧