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今を生きる 「大堀相馬焼かわいがって...」 思いや魅力語る若松

大堀相馬焼への思いを語る長橋さん

■伝統工芸士会長・長橋さん(浪江)
 「焼き物を窯出しする時、ピーン、ピーンと、窯全体が鳴り響くんです。あの音はいい」-。大堀相馬焼の伝統工芸士会長を務める長橋明孝さん(72)=浪江町=は、焼き物に細かいひびが入る「貫入(かんにゅう)」の音を思い出しながら語り続けた。

 28日から会津若松市の会津アピオで始まった全国伝統的工芸品フェスタin会津で、伝統工芸士によるセミナーが企画され、トップバッターとして避難先の東京から駆け付けた。大堀相馬焼の歴史、丁寧な作業を積み重ねていく作り方、外国人にも認められた魅力-。話しているうちに、いくつもの思いが込み上げてくる。
 県内の伝統的工芸品の1つとして、会場で大堀相馬焼を紹介するはずだった。しかし、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で、浪江町大堀の自宅は警戒区域に。「いいものが出品できないから」と、専用ブースの設置は断念し、入り口付近にようやく小さな販売コーナーを設けた。
 地震で自宅や店は壊れたが「腕があれば、明日からでも作れる」と、思っていた。それなのに、いつ帰宅できるか、いまだ見通せない。避難先は江東区の公務員アパートの17階にある。夜、窓からは無数の明かりが見える。「この電気をともすために、原発は動いていたのか」。瞬くネオンが、やりきれなかった。
 セミナーではそんな避難生活の様子も語った。「大堀相馬焼は続けられますか」と質問が出ると、各地に避難している二十一窯元の仲間の顔が浮かんだ。復興が容易でないことは分かっている。それでも「若い人が頑張ってくれている。何とか守っていきたい」と、自らに言い聞かせるように答えた。
 請われて都内の陶芸教室で教えた。「大堀相馬焼頑張れ」と、応援してくれるファンが全国にいることを知った。だから、セミナーで話を聞いてくれた人にも感謝し、最後は「これからも大堀相馬焼をかわいがってください」と、笑顔で頭を下げた。大きな拍手が会場を包んだ。

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