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苦悩する自治体/双葉町(24) 組織の力低下懸念 「町に帰る」意識薄れないか

旧騎西高校内の埼玉支所。組織が分かれ、残る職員にとっても負担は増す感覚になる

   役場が2つになると組織力が落ちるのではないか。

 双葉町役場内には、地元を離れて「仮住まい」という厳しい状況に置かれた自治体が、組織と人員を2つに分けたら、さらに行政運営で困難が増すと心配する見方がある。埼玉支所で業務全般を統括する武内裕美総務課長(58)は「もともと支所を置く規模の町ではない。力を無駄に分散させないようにしなければ」と考えている。
 福島県内の町民からは県内に拠点ができたことで、支援物資の配布、仮設住宅や借り上げ住宅の巡回などでこれまでよりきめ細かな住民支援が期待される。
 10月24日現在、町民約7000人のうち県内には約3200人、県外には約3700人が暮らしている。埼玉県内では役場機能を置く加須市の旧騎西高に住む約700人を含め、約1300人が避難生活を送っている。
 福島支所には埼玉支所などとの連絡調整や町情報の伝達などを担う総務班に5人、避難者の相談、支援物資の受け入れや配布などに当たる生活支援班に10人、証明書発行などを担当する住民生活班に5人の合わせて20人が配属された。ほかに町社会福祉協議会から2人、県の絆づくり事業の支援員10人も派遣された。
 双葉町は仮設住宅建設の調整が遅れ、他町村より完成がずれ込んだ。建設地について住民の希望を聞き、郡山市といわき市に250戸、白河市に120戸など県内に755戸が完成したが、町民には「遅れた分、不便な場所」という不満も生じた。
 従来のコミュニティーを維持するため、仮設住宅の割り振りを旧行政区ごとにまとめた自治体もあったが、双葉町ではそうした配慮まで及ばなかった。仮設住宅の自治組織づくりなども手付かずだ。
 福島は埼玉より少ない人数で、これまでよりきめ細かい住民支援に当たることが求められる。「町にいた時のようにいかないのは分かっているが、厳しい環境にある町民の要望に十分に応えられるのか」。幹部職員の1人は心配げにつぶやく。拠点が遠く離れることによる意思決定の遅れも懸念する。「一般論で言えば、組織は分散しない方がいい。全職員の力を結集し、努力でカバーするほかない」

    町民の気持ちも分断されると懸念する声もある。

 「支所を2つにしたことでコミュニティーの維持は大丈夫だろうか。離れていることで町に帰ろうという共通意識も薄れてしまわないか」。家族を東京に避難させ、町で営んでいた運送業再開のため郡山市の借り上げ住宅で暮らす高木徳行さん(33)は、町民の古里に対する心が失われてしまわないか心配する。
 町が町民の意見を直接聞く機会は少なかった。高木さんは「以前は福島と埼玉での支援で不公平を感じる人もいた。2つの支所がどの土地の町民も平等に扱い、住民の気持ちを1つにまとめる努力をしてほしい」と願う。
 福島と埼玉。難しいバランスの中で、職員は「双葉町民」としての意識をばらばらにしないために何をすべきか悩んでいる。

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