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【西郷、下郷の産業集積構想】「特区」見えず正念場 意欲企業足踏み 国に早期決定望む声

工場内で育つレタスを見守るスプレッドの稲田社長=21日、京都府亀岡市

 西郷村と下郷町で計画されている植物工場や福祉施設、観光産業などの産業集積構想は足踏み状態が続き、正念場を迎えている。被災地の復興を支援する国の復興特区制度や、初期投資の負担軽減のための公的助成の詳細な中身がいまだ示されていないためだ。現時点で20数社が進出に前向きで、1300人の雇用創出が見込まれている。関係者からは「国は早く方針を示すべきだ」と不満の声が上がっている。

■復興への熱い思い

 京都府亀岡市にあるスプレッド(本社・京都)の野菜工場。外界と隔離された環境でレタスの栽培が行われている。「これまで培ったノウハウを生かし、福島ブランドの野菜を生産したい。キュウリなど福島の野菜は関西でも有名だった。福島県の野菜づくりが復活できるよう力を貸したい」。稲田信二社長は青々と育つレタスを眺めがら、産業集積構想に名乗りを上げた理由を語る。
 工場は水耕栽培とは違い、太陽光に依存しない完全閉鎖型。天候や季節に影響されず、1年を通じて安定供給できる。「周辺の環境に左右されない植物工場は、放射線問題に悩む福島県にこそ、立地する意義がある」と熱い思いをたぎらせる。
 介護大手のニチイ学館(本社・東京)と音声認識技術のアドバンスト・メディア(同)は西郷村で音声認識技術を活用した議事録作成システムの事業展開を検討している。
 両社が出資した「サイバークラーク研究所」が担当し、自治体の議会や企業の会議を録音した音声データを基に、完全な議事録に仕上げる計画だ。同研究所の鈴木清幸社長は初年度で約26億円の売り上げと常勤、パートを含め約1100人の雇用創出を見込む。
 両社とも、規制緩和や税の軽減措置などが盛り込まれるとみられる国の復興特区制度や、初期投資の負担軽減のための公的助成に注目している。しかし、国から具体的な内容が示されておらず、前に進めない。

■方針不透明

 「原発事故による風評を払拭(ふっしょく)し、企業誘致を進めるには、他県以上の好条件が求められる」。西郷村と下郷町は、構想実現には、開発許可の手続きを一本化したり、特例を設けたりする復興特区制度が鍵を握るとみている。
 ただ、制度の詳細はいまだ明らかにされていない。法に基づく規制緩和が伴うため、各省の調整に時間が掛かっているからだ。政府の東日本大震災復興対策本部福島現地対策本部は「被災状況に合わせた制度設計が必要。各省が慎重に調整している」と明かす。
 一方、西郷村の担当者は「企業は全国的な視点で立地先を探している。メリットを示さなければ、企業誘致の好機を逃しかねない」と国の対応の遅さに懸念を募らせる。
 企業誘致には進出企業への手厚い財政支援も欠かせない。国は本県分の復興基金3500億円の中に、200億円を上限とする進出企業への補助制度を盛り込む方針だが、県商工労働部の担当者は「あくまで製造業を念頭に置いたもの」との見方を示す。全ての企業に支援策が適用されるかどうかは不透明だ

【背景】
 産業集積構想は米大手経営コンサルティング会社、A・T・カーニー社が東日本大震災直後に作成し、8月に西郷村と下郷町に示した。植物工場や福祉施設、観光産業などを集積する構想で、スプレッドやニチイ学館のほか、植物工場には丸紅、物流センターに国分、介護や観光にはパナソニックやセントケアなどが進出に前向きな意向を示しているという。一方、政府は被災地の復興を支援するため、今国会への復興特別区域(復興特区)法案の提出を目指している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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