東日本大震災

「連載・今を生きる」アーカイブ

  • Check

今を生きる 富岡町民歌忘れない 8カ月ぶり古里思い涙

なじみ深い富岡町民歌を熱唱する伊藤さん(右から4人目)。思いがあふれ涙する人もいた

■伊藤ヒデさんら6人 郡山の「祭り」で披露
 「ああー、富岡に、わがまちに、朝の陽(ひ)が大きく昇る―」。30日、郡山市の太田デイサービスセンターで催された秋祭りで伊藤ヒデさん(75)ら富岡町の住民6人の歌声が響いた。町の昼下がりに毎日流れていたいつもの町民歌「富岡わがまち」。町では催しのたびに歌っていたなじみの曲に声をそろえるのは8カ月ぶり。歌いながら古里への思いと涙が自然にあふれた。
 伊藤さんは合唱団体の富岡コーラス代表を務めるなど、4半世紀にわたって富岡地域の合唱を引っ張ってきた。東日本大震災後、ビッグパレットふくしまでの避難生活を経て郡山市の借り上げアパートに引っ越した。震災後はほとんど歌うことはなかった。
 避難者との交流を進める同センターからの出演の誘いを受け、「富岡わがまち」を歌おうと考えた。古里を忘れないためにも歌い続けなければと感じた。
 迷いもあった。2番にある「新しい、科学の技(わざ)に」の歌詞は原発を意味するだけに声に出すことがためらわれた。しかし原発に支えられていたことを隠すのでなく、堂々と声に出すことで「決して忘れない」という意志を込めたいと思った。
 前奏が流れると6人のうち何人かの目から、すぐに涙がこぼれた。伊藤さんも目を潤ませながら歌った。「これまで何気ない曲と思っていたのに、懐かしい思い出が浮かんで涙が止まらなかった。古里の歌は古里に帰るまで途絶えさせない」と自分に誓った。

カテゴリー:連載・今を生きる

「連載・今を生きる」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧