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苦悩する自治体/双葉町(25) 迫られる重い決断 町民の不満どう受け止める

町職員と打ち合わせする井戸川町長。町の将来像提示が求められている

   どこかぶぜんとした表情で報道陣に囲まれていた。

 政府が29日、市町村を対象に県庁で開いた除染に伴う汚染廃棄物の中間貯蔵施設設置などに関する説明会に、東京電力福島第一原発が立地する双葉町の井戸川克隆町長(65)も出席していた。感想を聞かれ、「町内への設置は賛成できない。帰るのを諦める町民が増えるようなことはあってはならない」と強い決意をにじませた。
 原発事故後、何度も重い決断を迫られてきた。原発から遠く離れた埼玉県加須市に町民を避難させた町長の大胆な判断は、町民や双葉郡内の関係者から「思い切ったことをした」「放射線を考えれば遠くに逃げることが得策かもしれない」などと評価された。
 しかし、加須市の旧高校校舎でのプライベートのない生活には次第に不満が高まった。福島県内に戻る町民も増え、加須市やその周辺でアパートを借りる人もいた。
 双葉郡の他町村と足並みをそろえるべきとして、町議会が役場機能の県内移転を求めた動きは町民の署名活動にもつながった。避難生活の長期化で、町民の要望が生活の安定に向くにつれ、県内の町民からは遠く離れた町長や役場に厳しい意見も寄せられるようになった。
 町は埼玉県に居続ける理由を「できるだけ放射線の危険から町民を離したい。安全が確認されるまでは、(主な機能は)埼玉に」と主張する。しかし、いわき市の仮設住宅に住む自営業の福田一治さん(40)のように「それなら福島で暮らすわれわれの安全はどう考えてくれるのか」という声もある。

   町の将来への展望が見えないとする声もある。

 双葉郡では復興計画の策定に着手した町村もあるが、双葉は手付かず。井戸川町長は復興計画について「警戒区域解除の見通しもまだ。詳細な汚染状況も確認できていない。軽率に作るわけにいかない」と慎重な構えだ。
 9月定例議会で町長は「教育環境を含め、町民を1カ所に集めたい」との一時的な本拠地構想を示した。しかし、町民にとっては「具体的に示されないと町が何を考えているのか分からない」という不満につながっている。
 さまざまな批判に対し井戸川町長は「怒りの矛先が町に向くのは仕方がないが、責められるべきは国や東電。途中経過の説明より、結果が大切だと思っている。全ての人には理解されないかもしれないが、町民のことを考え、先手を打っている」としている。
 見えない将来への懸念は役場内にもある。「町はいったいどこに向かうのか自分も知りたい」。内部から疑問の声が漏れ出る。
 中間貯蔵施設の設置について双葉郡内には「警戒区域内でやむを得ないのでは」という雰囲気も漂う。今後、どのように議論が進むかは不明だが、町長は事態の進展を目指す政府のもくろみ、県や周辺自治体の考え、将来に不安を抱える町民の声などに囲まれながら、いくつもの重い判断を迫られることになる。「町に施設を造る議論が進まないことを望む」。いら立ちを抑えながら町長がつぶやいた。

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