東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【ホールボディーカウンター県内導入】被ばく検査 順番いつ 機器高額、国支援なし

専門家から内部被ばく検査の結果について説明を受ける受診者(左)=21日、いわき市

 ホールボディーカウンターを独自に導入し、住民の内部被ばく線量の検査に乗りだす市町村が増えている。安全安心を求める住民の期待に応えるのが狙いだが、1日に検査できる人数は限られ、来年導入する郡山市では全市民の検査を終えるのに11年もかかる計算だ。機器を追加しようにも高額で、国の財政支援はなく、検査要員の確保もままならない。検査の順番を待つ市民からは「スピード感ある対応を」と不満の声が上がっている。

■子どもと妊婦優先
 県の委託を受け、21日からホールボディーカウンターによる18歳以下の子どもと妊婦らの内部被ばく調査が始まったいわき市立総合磐城共立病院。初日は市内と楢葉町の住民約30人が検査を受け、結果について説明を受けた。
 対象は市民だけで約7万5000人に上るが、検査できる人数は1日40~50人程度。来年度からは、市が独自に設置する2台と合わせて3台体制での検査が可能になるが、完了するのは市民だけで4~5年はかかる。市の担当者は「19歳以上の市民ニーズもあるだろうが、当面は子どもと妊婦を優先するしかない」と検査の限界を感じている。
 来年4月以降、約4000万円するホールボディーカウンターを2台導入する郡山市も同じ悩みを抱える。1台当たり1日100人超の検査を見込んでいるが、約6万人の対象者の検査を終えるのに最低で2年、約33万人の全市民となると11年の歳月を要するという。
 担当者は「県による調査も始まったが、いつ順番が回ってくるか分からない以上、市単独でできることを進めるしかない。導入費用は国や県に求めていくつもりだが、現時点で国に支援の動きがなく、これ以上台数を増やすことは難しい」と不満を口にする。

■いら立ち
 県内の自治体の中で最も早い7月上旬から検査を始めた南相馬市では、受け付け開始からわずか2週間で小学生以上の市民約9700人から予約の申し込みがあり、急きょ予約を締め切った。現在、県から貸与された1台と、市が独自に購入した1台の計2台で検査しており、来年1月中には予約分の検査が完了する見通しだ。
 市は来月にも予約受け付けを再開するが、市内原町区の主婦(32)は「市民は放射線への不安を抱えている。検査が何年後になるか分からない現状では、市民の流出が止まらないのではないか」といら立ちを隠せない。

【背景】
 県はホールボディーカウンターによる内部被ばく検査を県内で進めている。当初は計画的避難区域や双葉郡の町村などの子どもや妊婦を抽出して実施しており、現在までに検査した住民は8000人を超える。今後、検査対象の地域を順次、県内全域に拡大する方針だが、具体的な計画は示していない。カウンターを所有している県外の自治体や団体に検査を委託しているほか、県所有のカウンターを使用。原発事故前から所有していた1台は南相馬市に配置した。移動測定車5台の購入を決め、このうち1台をいわき市に配置した。県によると、自治体独自にカウンターを設置し、稼働しているのは南相馬、二本松の両市。設置を検討・予定しているのは福島、郡山、いわき、本宮の4市。

市民「迅速な対応を」 容易でない「自治体独自」 病院と連携も

■競争懸念

 ホールボディーカウンターは高額な上、結果を分析できる専門家も必要になるため、自治体独自の導入は容易ではない。
 須賀川市は市内の国立病院機構福島病院にカウンターの設置を要望してきた。病院側は全国の機構病院から機器を借りる想定だが、メンテナンス料、専門の人員確保などの調整が難航し、進展していないという。
 市幹部は「自治体主導で導入すると、市町村間の競争になり、地域住民の不満を招きかねない。もっと県に主導してもらいたい」と注文する。
 小規模自治体の注目を集めているのが、県内の民間病院で初めて導入した平田村のひらた中央病院だ。病院を運営する医療法人誠励会はこれまでに川俣、三春、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の10町村と協定を結び、各町村の4歳以上18歳以下の子どもを中心に検査を進めている。隣接する須賀川市も協定締結を検討している。
 ただ、病院には一般県民からの検査希望も多く、これまでの問い合わせ数は約5000件に及ぶ。現在、1日平均の検査数は60人程度だが、100人程度までは増やすことができるため、今後、放射線技師や看護師、事務員らを増員し対応する考えだ。

■子どもの測定課題
 既にホールボディーカウンターの導入を決定、または予定している自治体は子どもの検査を優先させるが、小さな子どもの検査には課題もある。
 二本松市は青森県の国立弘前病院からホールボディーカウンターを無償で譲り受け、10日から全市民の内部被ばく検査を始めた。ただ、身長120センチ以下の乳幼児は測定結果に誤差が出やすいという。市の担当者は「もともと大人を対象に作られているため、子どもだと計測位置がずれてしまう」と話す。市は今後、協定を結んでいる独協医大の木村真三准教授ら専門家チームと相談し、子どもでも正確に測定ができるタイプのカウンターを借りるなどの対応策を検討する。
 本宮市も12月1日から検査を開始する予定だが、受診者は5分程度、動かずにいることが必要なため、3歳未満の子どもは対応が難しい。市は母親を検査し、子どもの内部被ばく量を知るための「参考値」にしてもらう考えだ。検査結果を正しく理解してもらうため、専門家を招いての市民説明会の開催を予定している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧