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【県内の研修医内定者大幅減】へき地医療に影響も 原発事故で敬遠続く

カテーテル挿入を学ぶ研修医たち=福島市、大原綜合病院

 来年度から県内16の指定病院で臨床研修を受ける新人医師の内定者数が大きく減ったことで、病院関係者は対応に苦慮している。学生や保護者が東京電力福島第一原発事故の影響を心配しているためとみられるが、病院側は効果的な打開策が打ち出せずにいる。福島医大では、医師派遣の即戦力となる後期研修医の確保も見通せず、「へき地の病院などへの医師派遣が難しくなる可能性もある」との懸念が出ている。

■悪い予感的中

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 医師臨床研修マッチング協議会によると、今年度と昨年度の初期研修医の内定者数は【表】の通り。いわき市の2病院で昨年度と比べ12人減となった。一方、放射線量が低い会津地方では3病院合わせて10人増えた。
 「原発事故で学生に動揺が広がることを心配していたが、悪い予感が当たった」。福島市の大原綜合病院の佐藤勝彦院長は表情を曇らせる。
 ここ数年は定員が全て埋まる「フルマッチ」が続いていたが、今年度の応募は3人で、内定者は1人だけ。「来年もこの状況なら、10人減ることになる」と危惧する。研修医は救急医療の戦力になっており、人数が減れば、常勤医の負担増につながりかねない。
 国見町の公立藤田総合病院は、建物が免震構造で地震に強いことや、町内の放射線量が低いことを学生にアピールし、見学者は25人と例年の3~4倍あった。しかし、実際の内定者は2人と昨年度と比べ1人しか増えなかった。担当者は「若い研修医の存在は院内の活気づくりに欠かせないが...」とため息をつく。

■動向読めず
 2年間の初期研修を終えた後、大学の研究室や研修病院で専門医や認定医を目指す後期研修医の応募者が減るのではないかとの懸念も出ている。
 福島医大の各講座は、経験を積ませるため最低1年は後期研修医をへき地の病院などに派遣している。しかし、大学も重篤な患者を扱う3次医療機関の付属病院を抱えており、手元に戦力が薄くなれば、派遣がままならなくなり、へき地医療に影響が出かねない。
 同大の後期研修医の応募は12月が締め切りだが、動向がまったく読めないという。関係者は「大幅に減り、派遣医師を大学に引き上げるような事態にならなければいいが...」と不安げに話す。
 一方、毎年5~6人の後期研修医を採用している県内のある病院では、即戦力の後期研修医の応募が例年の半分程度にとどまっている。担当者は「今後、医師不足にならないかと心配している」と打ち明ける。

【背景】
 改正医師法に基づき、医師免許取得後、2年間の医療現場での臨床研修が平成16年度から義務付けられた。研修先は必要な年間症例数などを満たした臨床研修指定病院で、県内では16病院が指定されている。研修医は研修後も地域に残って勤務する可能性が高い。このため、研修医の数は将来の医師確保の目安となる。福島医大の場合、20年度の卒業生79人のうち40人が医大や県内の病院で初期研修を受け、ほぼ全員が今年度から医大で後期研修を受けている。


現場の「即戦力」薄く 病院、有効策打てず 「風評被害払拭しかない」


■複雑な思い
 研修病院の関係者は、初期研修医が減少した理由に東京電力福島第一原発事故の影響を挙げる。中には「学生よりも、むしろ保護者が放射線の影響を心配し、県内勤務にストップをかけている」との指摘もある。
 来年度、マッチングに参加する福島医大の男子学生(5年)は宮城県出身だが、卒業後は本県勤務を考えていた。しかし、原発事故後は両親が東北での勤務に反対している。「福島の医師が少なくなることは大変なことだと分かっている。でも、将来の健康や社会的偏見を考えると福島に住むことは難しい」と理想と現実の板挟みに悩む。
 県内出身の女子学生(5年)は県内にとどまるつもりだが、放射線への不安は消えない。両親も会津地方や県外の病院を勧めるという。「県内勤務なら会津地方の病院かな」と複雑な思いを語った。

■福島医大生に調査
 各研修病院はこれまで、研修プログラムや給与など待遇面を充実させるなど、魅力的な職場づくりに努めてきたが、原発事故が収束しない中、決定的な次の一手がない。
 初期研修の内定者が定員14人のうち2人にとどまったいわき市立総合磐城共立病院の担当者は「症例の豊富さとともに、ホームページに放射線量の詳細なデータを公表するなどして風評被害を払拭(ふっしょく)するしかない」と話す。
 福島市のわたり病院は、福島医大の推薦入試に導入されている県の緊急医師確保修学資金に注目する。学生が修学資金を受けるには卒後一定期間の県内勤務が条件だが、現時点では、勤務先は公立または公的病院に限られている。「私立の研修病院にも配属できるよう見直してほしい」と訴える。
 福島医大は、内定者が減った理由を探るため、6年生を対象にアンケートを実施し、集計を進めている。
 同大医療人育成・支援センターの担当者は「医療体制が弱いと、医師はもちろん企業も進出してこない。地域の復興にも関わる問題なので、愚直に取り組んでいくしかない」と作業に取り組む。
 県も全県版の地域医療再生計画をまとめ、流出した医師ら医療スタッフを確保する考えだが、地域医療課は「研修医確保の対応は一足飛びにはいかない。研修を受け入れる体制ができていることをアピールしていく」としている。

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