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【特定避難勧奨地点追加】対応遅くあきれ顔 「今更言われても」 子ども、既に自主避難

これまで自主的に行った表土入れ替えや除染などの伝票や写真を保存している菅野さん=25日、伊達市保原町富成地区の自宅

 県内初の特定避難勧奨地点が伊達市で指定されてから約5カ月。伊達、南相馬両市で33地点(37世帯)がようやく追加指定を受けた25日、住民からは政府の対応の遅さに不満の声が上がった。

■除染済み
 「今更地区内で追加すると言われても、うちの指定は難しいだろう」。伊達市保原町富成地区に住む菅野助光さん(67)は手元に置いた自宅の除染記録を見詰めた。
 自宅周辺が放射線量が高いと知ったのは4月。屋外は毎時10マイクロシーベルト。部屋の中でも毎時1.0マイクロシーベルトを超えた。老後のための貯金を使い、大切に育てた庭の野菜や木々を抜き取り、庭の土を入れ替えた。雨水が流れやすいようにコンクリート敷きにもした。「ここで暮らしていくには、除染しかない。安全はお金に代えることができない」
 8月の詳細モニタリング調査では屋外で毎時1.4マイクロシーベルトまで下がった。ここまで放射線量を下げる努力をしたのは自分だ。何もしなかったら、指定されていたかもしれない。さまざまな思いに揺れる。
 避難勧奨に応じると診療費の一部免除や国民年金保険料の減免などの支援を受けることができる。「除染にかかった費用はどうするのか」と不満をもらした。
 25日、勧奨地点の追加指定を受け、仁志田昇司市長は臨時記者会見を開いた。指定までに原発事故から8カ月強、詳細モニタリング調査から3カ月余かかった理由について、「国からは緊急避難準備区域の解除作業などと重なり、追加指定の事務作業が伸びたと説明を受けた。市も再三問い合わせていたが、今になってしまい残念」とコメントした。

■子どもの姿なし
 南相馬市で追加指定世帯が出た原町区の大原地区。行政区長の深野良興さん(72)は「すでに子どもの姿はここにはない。残る住民も高い放射線量に不安を抱いて暮らしている」と訴えた。
 同地区で最初の勧奨地点指定が出たのが7月。以来、指定を受けなくても、子どもがいる世帯の自主避難が相次いだ。現在、原発事故発生前にいた約120世帯のうち、子どもがいる約40世帯のほとんどが他地域に引っ越したという。
 同地区をはじめ勧奨地点を持つ市内8行政区は10月上旬、災害対策協議会をつくり、除染や賠償対象の拡充などの要望活動を続けてきた。協議会長も務める深野さんは「国や東京電力が健康被害対策をしていかなければ、誰も戻って来れない」と指摘した。
 桜井勝延市長は25日、「勧奨地点指定が出た地区での除染を優先的に進める」との考えを示した。

【背景】
 特定避難勧奨地点は、警戒、計画的避難の各区域外で、放射線量が局地的に高い「ホットスポット」に居住する住民に避難を促す制度。政府の原子力災害現地対策本部長が指定するが、強制力はなく、避難は住民の判断に委ねられる。今回の指定で伊達市128世帯、南相馬市153世帯、川内村一世帯の合計282世帯となった。


特定避難勧奨地点追加 異なる基準に不信 住民「不公平だ」 政府「地元無視できない」

 避難勧奨地点の指定について伊達市や南相馬市の住民からは基準の分かりにくさを指摘する声が上がっている。

■守る気あるのか
 幼稚園児2人を持つ伊達市保原町富成地区の自営業佐藤浩之さん(34)は「どうして伊達と南相馬で指定の基準が異なるのか」と不満を口にする。
 8月の測定で自宅前は毎時2.0マイクロシーベルト以上あったという。南相馬市の基準値は地上五十センチが毎時2.0マイクロシーベルト以上で妊産婦や高校生以下の子どもを持つ家庭が条件と聞いている。
 幼稚園の保護者代表を務めている。原発事故後、地域には子どもを持つ世帯の避難支援や、食の安全などの難題が持ち上がる。これまで何の解決もなく、いらだちを募らせる。
 南相馬市原町区の馬場地区から避難している30代の母親は怒りをあらわにした。「子どもを守る気があるなら、希望する世帯を指定すべき」
 同地区にある自宅は特定避難勧奨地点に指定されておらず、比較的線量の低い原町区の親戚宅で暮らす。「自宅は基準値以下かもしれないが、生活圏の線量が高いことに変わりはない」と指定基準に疑問を投げ掛ける。
 政府は年間20ミリシーベルト以上の地点を指定することを基本に、地元自治体からの要望を踏まえ、基準を決めている。政府の原子力災害現地対策本部は「地元の意向は無視できない」と基準を一律にできない理由を説明し、「それぞれの事情を勘案した結果、地域ごとに基準が異なる結果となり、分かりにくさを生んでいるのかもしれない」と認めた。

■線引き明確に
 特定避難勧奨地点への指定が協議されたが、見送られた福島市渡利地区。小学生の子ども3人を持つ主婦(38)は伊達、南相馬両市の追加指定に「放射線量があまり変わらないのになぜ。不公平だ」と憤る。地域によって指定にばらつきが出ることに対し、「線引きの明確な基準を示してほしい」と訴える。
 福島市は渡利地区の詳細調査で1地点が基準値を超えた。担当者は「複数地点で基準値を超えた伊達、南相馬両市とは状況が異なる」とし、線量が必ずしも高い地域とは言い切れないという。「市民にとってこれまで通りの生活を維持するのが理想。安心を確保するには除染を進めるしかない」とつぶやいた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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