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【放射性物質簡易検査】予約殺到、順番いつ 食の安全関心高く

簡易型の食品の放射性物質測定器で検査する市職員=福島市・放射線モニタリングセンター

■測定器の早期充実 課題

 食の安心のため、県内の自治体などが進めている簡易放射性物質測定器による検査が新たな課題に直面している。予約が殺到している都市部では、検査までの時間がかかり、現状では保存可能な食品しか受け付けられない状況だ。消費者に正確な情報を伝えようと導入している小売業者は、検査件数などの限界を抱えながら検査態勢を継続させている。県内漁協は測定器は配備されたが、漁の再開を見据えた検査が確立できるか悩みは深い。

■2カ月以上先

 「保存が利く食品しか測定できなくなっている」。福島市の放射線モニタリングセンターの鴫原和彦所長は戸惑いを隠せない。
 市は家庭菜園の野菜などの放射性物質を測定するため、3台の簡易測定器を独自に導入した。1世帯1品目に限って1日計30検体を測定する。14日の開所以降、市民からの電話が鳴りやまず、25日現在、予約は約1300件を数えた。予定を書き込むファイルは2カ月以上先までびっしり埋まる。
 大波地区のコメから国の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたことも予約増に拍車を掛けた。鴫原所長は「測定する野菜は自家製以外に、スーパーで購入した食品もある」と市民に潜む食への不安を肌で感じている。
 ただし、2カ月待ちになると、実際に検査できるのは、主に日持ちするコメや井戸水だけ。25日にサツマイモを検査した福島市坂登の星津さん(86)は「比較的高い値が出ているキウイも心配。ただ、この予約状況では...」と諦め顔だ。
 独自に放射性物質測定器を購入し市民からの食品の検査を受け付けている。各市町村は多くが同様の状況だ。11日に検査をスタートした本宮市も現在約540件の予約があり、12月中旬まで埋まっている。

■正確性の確保

 測定器の需要が高まる中、国などは各自治体への測定器配置を支援している。消費者庁は24日から順次、市町村への測定器貸与を始めている。今年度中に要望する約40市町村への貸与を完了させる予定だ。農林水産省も補助制度を設け、測定器の購入を後押ししている。
 しかし、「発注から届くまで約2カ月かかった」(川俣町の担当者)など自治体からはすぐに納品できる態勢を築くよう求める声が上がる。
 普及に伴い正確性の確保も懸念材料だ。県は12月上旬、市町村職員を招いた研修会を計画している。県災害対策本部原子力班の片寄久巳総合調整チームリーダーは「市町村で導入している簡易型の測定器は周辺の放射線量に影響されやすい」と指摘。放射線の影響を受けにくい鉄筋コンクリートなどの建物に設置し周辺環境に配慮するよう求める。
 研修会では、主な測定器メーカーの関係者を招き、機種によって異なる操作性や、検体を細かく刻み均一にする必要性を徹底させることにしている。

■企業の限界

 福島市内を中心に店舗を展開するいちいは7月中旬、他のスーパーに先駆け簡易型の測定器を購入し検査を始めた。新設された放射線問題対策室の担当者は「消費者と接する中で、消費者が国や県の検査に不信感を抱いているのを感じた」と導入の経緯を振り返る。
 専従の職員を1人配置し、1日25品目を調べ、ホームページに結果を掲載している。商品の中には同社の検査で国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出され、県の検査を経て出荷停止になったケースもあったという。担当者は「商品は販売せずに撤去できたが、企業としての検査態勢には人の面でも資金の面でも限界がある。小売りの前段階で検査できていることが本来のあるべき姿」と検査態勢の充実を求めている。

【背景】
 県によると自治体などが導入している食品の放射性物質測定器は、主にゲルマニウム半導体検出器と簡易測定器の2種類。ゲルマニウム半導体検出器は検体が少量でも測定でき、エネルギー分解のチャンネル数が多く精度の高い測定結果を得ることが可能。一方で1台約2000万円と高価で、液体窒素を使うなど専門的知識も必要になる。簡易測定器は150万~500万円と比較的安く、一定の講習を受ければ使用できる。9月末現在、県内17市町村には簡易測定器を中心に計49台が配備されている。県は県農業総合センターに10台のゲルマニウム半導体検出器を配置し、農産物などの検査を実施している。


態勢確立進まず 全種検査は困難 県内漁協 国に専門施設求める

■漁協の困惑

 「沿岸漁業は本当に再開できるのだろうか」。小名浜機船底曳網漁協の職員は1台の簡易放射性物質測定器を前にため息をついた。
 県漁連は震災後、沿岸部の底引き網漁や刺し網漁などの出漁自粛をしている。ただ、操業再開の際は、全ての魚種で放射性物質検査を行う方針を打ち出した。県は簡易型測定器を小名浜機船底曳網漁協に1台、いわき市漁協と相馬双葉漁協に各2台の計5台配備した。
 ところが、沿岸漁業再開で想定される20種類近くの魚種の検査をどのように進めるか、めどは立っていない。検査態勢が確立しなければ、漁を再開しても消費者に受け入れられないことは確実だ。職員は「検査には時間がかかる。20種類以上の魚の検査を数台でこなすのは不可能だ。流通する前に魚が傷む」とし、国が全漁港に専門の検査施設を造るべきことを訴えている。

■販売の場に設置を

 福島大共生システム理工学類の難波謙二教授(環境微生物学)は福島市大波地区のコメから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことを踏まえ、「県の測定態勢には限界があり、今後も大波地区のようなケースがあり得る。基準値を超える食品を抽出できるよう、測定器を増やす必要がある」と国の主導で配置を推進することを求める。
 設置場所については「食の安全には消費者に安心してもらうことが大切。目に見えるという意味でも、直売場など販売する場に置く取り組みを進めるべきだ」と訴えている。

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