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【若松の汚泥処理】基準以下でも拒否 宮城の業者「安全担保されず」

会津若松市下水浄化工場敷地内に仮置きされている汚泥

 県内の下水処理施設で汚泥の処理が進まない問題で、会津若松市は21日から宮城県の肥料業者に汚泥を搬出する予定だったが、20日になって受け取りを拒否された。汚泥の放射性セシウム濃度は肥料としての流通基準値200ベクレルを下回っているが、業者側は「周辺住民の安全が担保されない」としている。市内では、このまま処理が進まなければ、平成24年度末で仮置き場が満杯になる見通し。市は新たな引取先の確保を迫られている。

■突然の電話

 会津若松市下水浄化工場から出る汚泥の放射性セシウム濃度は15日の検査で1キログラム当たり121ベクレル。国が埋め立て処分可能とする8000ベクレルを大きく下回っている。汚泥肥料としての流通基準200ベクレルも下回ったため、市は21日排出分から宮城県の肥料業者に引き渡し、汚泥はのり面整形などの土壌改良剤として加工処理される予定だった。
 市の担当者は19日にも業者に引き取りを確認。搬出に向けて準備を整えていたが、20日午後、業者から「受け取れない」との電話が入った。業者側は「思った以上に数字が高かった。現在の半分くらいにならないと難しい」としており、計画は白紙に。市の担当者は「あらためて受け入れ先を探すしかない」と頭を抱えた。

■続く仮置き

 下水浄化工場敷地には問題が表面化した5月7日以降、汚泥の仮置きが続いている。脱水した汚泥を約700キログラムずつ土のう袋に詰め、その上にブルーシートをかぶせている。15日現在の仮置き量は約2400トン。工場からは毎日14トンの汚泥が出ており、今後も増え続ける。
 汚泥に含まれる放射性セシウムは3月の東京電力福島第一原発事故発生時に放出されたものとみられ、時間の経過とともに減少している。これまでの測定で最も高かったのは
5月3日の2610ベクレル。9月1日には410ベクレル、11月1日には260ベクレルとなった。
 市は「200ベクレル以下でも引取先がない。これまでの仮置き分は当然、行き場がない」としている。


【汚泥引き取り拒否】自治体から困惑の声 国も解決策見いだせず

 会津若松市の下水汚泥が業者から引き取りを拒否された問題は、国が設定する安全基準よりも、地域住民らが求める安心感への対応の難しさがあらためて浮き彫りとなった。産業廃棄物処分場への埋め立ては県内でも住民の反対で難航している。県内の自治体からは「どこまで下がれば理解が得られ、処分できるのか」と困惑の声が上がる。

■想定外

 「安全性に問題がないとして示した基準。受け入れが拒否されるのは想定外だ」。農林水産省農産安全管理課の担当者は会津若松市の汚泥の引き取り拒否を知り、声を落とした。
 同省は6月、肥料に利用する場合の放射性セシウム濃度について、流通は1キロ当たり200ベクレル以下、乾燥して濃縮された製品は400ベクレル以下とする安全基準を都道府県に通知した。肥料になれば土と混ざり、およそ10ベクレル以下に低減することを検証して設定した。
 全国で自治体や業者向けに説明会を開き、理解を求めてきたはずだった。今後、県内で同様の問題が起こる可能性もある。「基準は法律や省令ではなく、強制はできない。再度、周知を徹底するしかないが...」と解決策を見いだせない状況だ。

■どこまで下がれば

 雪が舞う福島市の堀川町終末処理場には、約1000トンの汚泥が保管されている。春ごろに最高で約44万ベクレルと高濃度だった放射能レベルは4000~5000ベクレルまで低下。国の埋設基準である8000ベクレル以下をクリアした。それでも、住民の反対で処分場には埋められない。「200ベクレル以下でさえ引き取ってもらえないなんて...。どこまで低下すれば理解を得られるのだろうか」。市下水道管理センターの職員は、やり場のない思いを口にした。
 県によると、県内で保管されている汚泥の量は約2万1000トン。管理する自治体は福島市同様に埋め立てができず、身動きが取れない状況だ。「自治体と県外の民間業者の取引だけに、県として口を挟むのは難しい」。県下水道課の担当者は頭を悩ませる。
 県が管理・運営する浄化センター4施設の汚泥もようやく1000ベクレルを切った。「再利用できなければ、たまる一方。人ごとではない」と焦りの色を隠さない。県外に運び出すのが困難となれば、県内での処理が残された道となる。県は県内の今後の保管状況をにらみながら、県内業者に協力を求めることなどを検討する。

【背景】
 東日本大震災の影響で損壊した施設を除き、現在稼働している県内の県、市町村管理の下水道処理施設は52施設。このうち30施設で汚泥の処理ができずに保管されている。国は6月に1キロ当たり8000ベクレル以下なら管理型処分場に埋設可能とする基準を示した。しかし、処分場の周辺住民の反対で自治体は埋め立てできない状況に陥っている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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