東日本大震災

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【県内ゴルフ場7社仲介申し立て】 原発賠償一刻も早く 風評で2億円超請求

風評被害でプレー者数が減少しているスパ&ゴルフリゾート白河矢吹

 東京電力福島第一原発事故の風評被害を受けたとして、県ゴルフ連盟加盟のゴルフ場経営会社7社は5日までに原子力損害賠償紛争解決センターに計2億4700万円の損害賠償請求の仲介手続きを申し立てた。連盟は加盟する全ゴルフ場に手続きを求めており、今回は被害額を算出した会社が集団で行った。県内では原発事故の影響でゴルフ場の閉鎖が相次いでいる。従業員の雇用や地域経済への影響も出ており、関係者は「1日も早い賠償がなければ施設を維持できない」と訴えている。


■苦境訴え
 原発から約90キロ離れた西郷村の白河高原カントリークラブ。4月中旬のオープン前から予約キャンセルが相次いだ。同ゴルフ場は宿泊施設を併設し、首都圏から泊まりがけでゴルフを楽しむ利用者が全体の7割を占めていた。それが今年は激減し、4~5月の利用者は前年の約半分に落ち込んだ。渡部仁支配人は「特に接待に使う法人のお客さまがほぼゼロになった」と話す。
 矢吹町のスパ&ゴルフリゾート白河矢吹も宿泊者数とプレー者数が大幅に減少した。関東圏の利用者はほぼ皆無で県内がほとんど。売り上げは前年の6、7割程度しか回復していない。周辺の放射線量は毎時約0.2マイクロシーベルトと比較的低く、電話での問い合わせでも安全を強調するが、相手の反応は鈍いという。小針栄喜副支配人は「線量の高低ではなく、県全体をひとくくりにされている。アルバイトを使う余裕はなく、正社員だけで対応している」と実情を明かす。
 5日、県ゴルフ連盟支配人会会長を務める会津磐梯カントリークラブの安部哲夫社長、新白河ゴルフ倶楽部の緑川正巳支配人、弁護団の佐藤善博弁護士(埼玉県)らが県庁で会見して苦境を訴えた。
 安部社長は「一刻も早く賠償金が支払われないと、閉鎖や従業員の解雇が避けられないゴルフ場が出てくる」と危機感を語った。さらに「将来を担うジュニア選手の利用も減っている。このままでは本県のゴルフそのものが廃れてしまう」と語気を強めた。


■除染に100億円
 年間約3万人の利用があった二本松市のサンフィールド二本松ゴルフ倶楽部は、原発事故で今季休業に追い込まれた。コースの空間放射線量が平均で毎時4.0マイクロシーベルトあり、除染費用などを含めると損害額は約130億円に上るという。
 同倶楽部は、ゴルフ場の維持に当面必要な経費など約8700万円の支払いを東京電力に求める仮処分申請を東京地裁にしたが、却下された。決定を不服として即時抗告した。オーナー会社の「サンフィールド」(本社・東京)の担当者は「来シーズンの再開を目指してはいるが、正社員12人のうち11人は自主退職しており、再びスタッフをそろえるのは容易でない」と訴える。
 いわき市のいわきプレステージカントリー倶楽部も震災直後から休業している。空間放射線量は平均で毎時6.0マイクロシーベルト程度と高く、土壌1キロ当たりの放射性物質の濃度は数万ベクレルに達する。
 約140万平方メートルに及ぶコース全体の芝生の張り替えや除染をするには約100億円かかり、社員やキャディーら16人の解雇を余儀なくされた。
 現在、原子力損害賠償紛争解決センターの仲介で東京電力と賠償について協議中だが、役員の1人は「東京電力には誠意がない。除染をして1日も早く営業を再開できなければ、自分に非がないのに解雇された社員らがかわいそうだ」と憤りを隠さない。

会見する(左から)安部社長、佐藤弁護士、緑川支配人


【背景】
 県内には約60のゴルフ場があり、このうち40が県ゴルフ連盟に加盟している。連盟によると、加盟各社の売上高の合計は、東京電力福島第一原発事故の影響で、3~8月期は昨年同期から2~3割減少した。また、加盟ゴルフ場の年間利用者数は昨年の120万人から40~50万人減少する見込み。今回申し立てを行った7社以外にも、6社が連盟を通じて弁護士と委任契約を結んでおり、損害額を算出した会社から順次手続きに入る見通し。


◆和解仲介の申し立てをしたゴルフ場

会津磐梯カントリークラブ(会津若松)
安達太良カントリークラブ(二本松)
白河高原カントリークラブ(西郷)
新白河ゴルフ倶楽部(白河)
棚倉田舎倶楽部(棚倉)
猫魔ホテル猪苗代ゴルフコース(猪苗代)
スパ&ゴルフリゾート白河矢吹(矢吹)


◆休業中のゴルフ場

リベラルヒルズゴルフクラブ(富岡)
いわきプレステージカントリー倶楽部(いわき)
いわきゴルフクラブ(同)
サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部(二本松)
ラフォーレ白河ゴルフコース(泉崎)
※休業中のゴルフ場は県ゴルフ連盟調べ。順不同

地域経済にも影響 宿泊客が大幅減 連携の業種に波及


■手の打ちようなし
 県内のゴルフ場の苦境は、周辺地域の経済活動にも影を落とす。
 棚倉町のルネサンス棚倉では、地元のゴルフ場で毎年開催していた国際大会が原発事故の影響で中止になり、延べ約600人の宿泊客を失ったという。担当者は「これまで多くの参加選手や関係者が連泊しており、大きな大会の中止は経営圧迫につながる。今のところ手の打ちようがないが、来年はぜひとも復活させてほしい」と強く願う。
 20年以上にわたり地元のゴルフ場に酒類や清涼飲料水を納めている県中地方の酒店は震災直後、ゴルフ場への売り上げが前年の3割程度にまで急激に落ち込んだ。その後、徐々に回復はしているが、経営者の男性は「個人商店のうちでさえ、影響は少なくなかった。大きな取引をしていた業者は果たしてどうなったか...」と心配する。県内では、ゴルフとスキー、温泉、医療ツーリズムなどをセットにして誘客する動きも出始めていた。ゴルフ場の不振はこうした取り組みにも影響を及ぼしている。


■ゴルフ場扱い未定
 東京電力は、ゴルフ場に対する賠償について、観光業とするのか、サービス業として扱うのか、いまだ結論を出しておらず、結果次第で賠償額に大きな差が生じる可能性がある。
 東電は観光業、サービス業のいずれも、9月以降の昨年同期比の減収分は全額を賠償する。しかし、震災以降8月までの分は観光業で20%、サービス業で3%を原発事故以外の要因として賠償額から差し引く。
 東電本店広報部は「今回の請求内容を確認した上で、誠意を持って対応する」としているが、「ゴルフ場の扱いについては、原子力損害賠償紛争審査会の議論などを見ながら詰めたい。いつ結論が出るか現時点では分からない」としている。

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