東日本大震災アーカイブ

【市町村の山林除染】国の対応待てない 鮫川村独自に開始

山林除染のため落ち葉をかき集める高齢者=鮫川村赤坂西野

 国が山林除染の対応策を固めきれない中で、いつまでも待てないと自治体が動きだした。鮫川村は14日、県内初となる独自の除染作業を行った。山林の除染は林業者にとっても死活問題だ。さらに治水や農業への影響の面でも早急な対策が求められている。ただ、取り除いた落ち葉や、枝の処理が大きな問題として横たわる。伐採木を使った発電設備を検討するなど新たな方策を探る自治体も現れている。

■焦り
 鮫川村赤坂西野地区の山林。村の委託を受け集まった地元の老人クラブ「西野長寿会」の会員約30人は、1ヘクタールの範囲で落ち葉を熊手でかき集めた。約3時間の作業で落ち葉の量は120袋、重さは計1・8トンにも上った。地上1メートルの高さの空間放射線量は除染前の毎時0.35マイクロシーベルトから0.25マイクロシーベルトに下がった。村の山林面積は約1万ヘクタールあり、当面は来春まで週末を中心に作業を続ける。集めた落ち葉は現地の山林にまとめて仮置きしている。
 村が独自の山林除染に乗り出した理由の1つに、国や県の対応の遅さがある。
 中山間地にあり、面積の約8割の1万ヘクタールを山林が占める村は農林業が基幹産業だ。しかし、東京電力福島第一原発事故後の8月、落ち葉から8500ベクレルの放射性セシウムが検出された。村は国から財政支援を受けられる「汚染状況重点調査地域」の指定を期待しているが、村内の年間の空間放射線量は指定の基準となる1ミリシーベルトぎりぎりで、実現するかは不透明。
 一方、農家は風評被害で厳しさが増しており、対策は待ったなしの状態だった。
 村の担当者は「できるだけ早く汚染のもとを絶たなければ、さらに被害が広がりかねない。時間との勝負で、除染ボランティアも県内外から募る必要がある」と焦りを隠さない。

■悪影響の恐れ
 原発事故に対する林業関係者の苦悩は深い。ある林業団体の関係者は「特に原発から20キロ圏内の林業は先がないと思う。東京電力にしっかりと賠償してもらうしかない」と本音を漏らす。
 山林除染の遅れは、山の治水機能や農業に悪影響を及ぼす可能性もある。
 中通りや浜通りでは伐採など山の手入れが以前のようにできない状況にある。林業関係者は「除染が進まなければ、山が荒れて水源のかん養機能などが低下しかねない」と危ぶむ。除染には積もった落ち葉の除去が効果的とされているが、「取り除き過ぎると表土がさらされ、雨などで削り取られてしまう。一筋縄ではいかない」と頭を痛める。
 地元産のコメから食品衛生法の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された福島市大波地区。稲作農家の男性(75)は、山から田んぼに流れ込む水に放射性物質が含まれていないか心配だ。「来年は安心して作付けできるのだろうか...」と、尽きない悩みに表情を曇らせた。

【背景】
 県によると平成21年度の本県の森林面積は、97万2千ヘクタールで県土の約71%を占めている。森林除染について実証試験を重ねてきた国は9月30日、住居近くの森林の除染方法についてはガイドラインを発表。落ち葉などの堆積有機物と枝葉を取り除くことが効果的とし、集落周辺の除染を優先するよう求めている。一方、住居から離れた森林の除染方法は14日現在、示されていない。


落ち葉、枝どう処理 指針、具体性欠く

■手探り
 国も9月には森林除染のガイドラインを示した。そこでは落ち葉と枝葉を除去するよう求めている。しかし、具体性に欠く内容に除染を担う各市町村は手探りの除染を迫られている。
 今月中にも住居近くの山林の除染を始める伊達市は、場所によって除染方法を変える。針葉樹林の一部は、ガイドラインで触れられていない間伐を実施するつもりだ。担当者は「針葉樹が重なり合う場所は、地表から離れるほど放射線量が高い。地表の落ち葉を除去するより間伐の方が効果的だ」と国の指針の内容の不十分さを指摘する。防風林のように枝葉を切ると役割を失う林もある。「山林は多種多様でガイドラインを簡単に当てはめることはできない。実情に合った除染の方法を考えなければならない」と頭を悩ませている。
 県林業研究センターは、森林除染の実証試験を実施中だ。市町村の作業に生かすため効率的な方法を探っているが、1日も早く効果がある方法を示すよう多くの市町村が求めている。

■焼却熱利用も
 一方で、除染で発生する大量の伐採木などをどう処理するかは大きな問題だ。仮置き場などの確保に困難が想定される中、川内村は伐採木の焼却熱を利用した発電施設の設置を計画している。
 詳細はまだ固まっていないが、担当者は「村の面積の約9割が山林で、伐採木を全て仮置きすることは不可能。除染を進めるには、クリアしなければならない課題だ」と話す。
 2年後の帰村を目指す飯舘村でも、伐採木などを活用したバイオマスエタノール精製工場を整備するよう、村議会が国に求めている。農地の除染に時間がかかるため、新たな雇用を確保する狙いもある。ただ、採算性の低さや、エタノールをどう利用するかなど課題は山積みだ。
 議会関係者は「苦肉の策かもしれないが、1日も早い帰村のために必要。村単独では実現できず、何とか国に支援してほしい」と訴えた。

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