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【ステップ2完了】収束阻む汚染水 タンク増設困難 海洋放出は理解得られず

福島第一原発を視察する細野環境相兼原発事故担当相(中央)=17日、政府の原子力災害現地対策本部提供

 東京電力福島第一原発事故の収束工程「ステップ2」完了を受け、細野豪志環境相兼原発事故担当相は17日、福島第一原発を視察し、「(原発の)一定の落ち着きを確認できた」との認識を示した。しかし、原発敷地内の汚染水の増加は止まらず、貯蔵タンクは間もなく満杯になる。タンク増設の用地確保もままならず、汚染水の海洋放出には漁業関係者が強く反発している。八方ふさがりの状態に、専門家は「事故収束作業はいまだ道半ばだ。汚染水が処理できなければ、廃炉作業は進まない」と指摘する。

■3月で満杯
 「今後は除染、住民の健康管理、一日も早い帰還だ」。細野環境相兼原発事故担当相は視察後、広野町で報道陣に言い切った。地震や津波などあらゆる危険を想定した場合でも「多重の防御策」が取られていることを強調した上で、事故収束作業が順調に進んでいるとの見方を示した。
 しかし、廃炉作業の生命線となる循環注水冷却システムは、つまずきを見せる。建屋などに滞留する汚染水を段階的に浄化して原子炉に注水させる仕組みだが、1日当たり200~500トンの量の汚染水が増え続けている。
 建屋地下に雨水や地下水が流れ込み、汚染水が増え続けるためで、改善策がなかなか見つからない。数百個に及ぶ汚染水タンクの許容量は14万トンで、16日現在の貯蔵量は10万6000トン。このままのペースで進めば、来年3月でいっぱいになる計算だ。
 東電はタンクの設置場所を確保するため、雑木林を伐採し、丘陵部をさら地に造成してきた。敷地内に山積するがれきを仮置きするスペースを設ける必要もあり、新たにタンク置き場をつくるのは難しいという。
 同社関係者は「タンクを永遠に増やし続けることは不可能だ。早く解決策を見つけなければ、注水できなくなる」と頭を悩ませる。

■逆なで
 汚染水を確実に減らす方法が一つだけある。海洋放出だが、漁業関係者の理解が得られない。
 東電は原子炉等規制法における放射性物質の濃度限度を下回った低濃度の汚染水を海洋放出する計画を立てた。西沢俊夫社長は福島民報社のインタビューで、「データを(漁業者らに)示しながら、納得するまで待つしかない」と苦しい胸の内を明かした。
 今月4日には、水処理施設からストロンチウムを含む約150リットルの汚染水が海洋に流出し、漁業者の心情を逆なでした。
 年明けからの操業再開に向けた準備を進めている県漁連の新妻芳弘専務理事は「海に出る準備をしているのに、水を差された形だ。東電は何度、漁業者を裏切れば気が済むのか」と語気を強める。

【背景】
 政府は16日、東京電力福島第一原発1~3号機の原子炉圧力容器底部の温度が100度以下の安定的な状態となる「冷温停止」と、放射性物質の大幅な放出抑制を達成したとして事故収束の「ステップ2」完了を宣言した。使用済み燃料プールにある燃料の取り出しや、原子炉の損傷部分の修復、遠隔操作による破損した燃料回収など廃炉に向けた工程と期間を盛り込んだ最長40年のロードマップを年内に公表予定で、来年から本格的な作業に入る。


炉内確かめもせず... 県、安全に疑問の声

 東京電力福島第一原発1~4号機の原子炉建屋内は、事故発生から9カ月が経過した現在も依然として放射線量の高い状態が続く。政府は事故収束を宣言したが、破損した燃料を含め、プラント内の確認はできていない。「目視もできない状態で本当に安全と言えるのか...」。県内部からは疑問の声が上がる。

■実態不明
 「人間の目で実際に確かめもしないで、原子炉は安全な状態になったなどとなぜ言えるのか」。県の原子力担当職員は、「ステップ2」完了を知らせる16日のニュースを冷めた気持ちで聞いた。
 福島第一原発敷地内では、今年8月1日、1、2号機の原子炉建屋の間にある主排気筒の底の部分で毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)を超える放射線量が確認された。厚生労働省によると、被ばくするとほぼ全員が死亡する値だという。各建屋に近づくことは不可能で、現時点で内部の状態を確かめることはできない。
 2号機で11月、放射性キセノンが検出され一時、臨界が疑われたのは、原子炉内部の完全な把握ができていないことが要因だ。
 大量の使用済み燃料が入っている使用済み燃料プールの危険性を指摘する専門家は少なくない。事故発生時、定期検査中だった4号機の全燃料が入っていたプールは冷却機能を失い、一時危機的な状態になった。プールに落下したがれきで一部の燃料が壊れた可能性は否定できない。塩分を含んだ水により、金属類の腐食が進み、放射性物質が漏れる恐れもある。
 今後、使用済み燃料プールからの燃料取り出しや、建屋や格納容器の修復など廃炉に向けた作業が始まる。しかし、建屋内をどう除染するのか、燃料をどうやって取り出すのかなど有効な方法は決まっていない。各作業は遠隔操作に頼らざるを得ないが、機材の開発はこれからだ。
 県の荒竹宏之県生活環境部長は「ステップ2の完了は収束作業の終わりではなくてスタート。収束までの道のりは長い」と語る。

■高い放射線量
 原子炉からの放射性物質の放出が収まってきたことが「ステップ2」完了の判断材料の一つとなった。現在、格納容器から放出されている放射性物質の量から敷地境界の年間被ばく線量は最大で0.1ミリシーベルトと試算され、上限の1ミリシーベルトを大きく下回っている。
 だが、放出量が下がったことを表しているだけで、敷地境界に設置してあるモニタリングポストの一つは毎時90マイクロシーベルトを示す。これまでに放出された放射性物質で放射線量は高いままだ。
 福島第一原発の敷地外でも線量の高い場所が点在する。県と文部科学省の観測では、原発から西北西4キロ地点にある双葉町の山田多目的集会場付近では毎時27マイクロシーベルトが計測されている。東電によると、50マイクロシーベルトを超える場所もあり、放射性物質はまだら状に分布している。
 警戒区域の市町村では国の除染モデル事業が始まったが、高線量のエリアを人が住める状態にするための技術開発については「これからの課題」(環境省福島除染推進チーム)だ。

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