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今を生きる 手のひらにいとしいわが家 50分の1模型で「再建」 避難暮らし、思い出よみがえる

わが家の模型を手に思い出話をする勝彦さん(左)と志津子さん

■大熊の田端勝彦さん・志津子さん夫妻
 いたずらをしたわが子を叱った居間、孫がよちよち歩きをした廊下、愛犬が無邪気に走り回った庭...。全部が手のひらの上にある。新潟県柏崎市で避難生活を送る大熊町の会社役員田端勝彦さん(66)は、妻志津子さん(62)と寄り添い、ミニチュアの"わが家"を眺める。「そんなことあったっけ?」。志津子さんが勝彦さんの問い掛けに笑う。
   ◇    ◇
 10月から夫婦で少しずつ"わが家"の再建に取り掛かった。建物部分は、手先が器用な勝彦さんが以前に作った模型。一時帰宅で持ち出し、庭作りから開始した。
 ブロック塀は発泡スチロール、庭の木々は模型店やホームセンターで材料を購入して作った。玄関前の石畳の模様にもこだわった。
 植樹して3年目に、ようやく実を付けた思い出深い柿の木も忠実に再現した。その年、収穫できた実はたった1つ。丁寧に実をもぎ取って干し柿にした。「ありゃ献上柿並みの出来栄えだったな」。勝彦さんが、昨日のことのように話す。
 模型を眺めていると、アルバムをめくるように記憶がよみがえる。結婚生活40年のうち、半分以上を過ごした場所だ。勝彦さんは東京電力関連企業の下請け会社の社長だった。避難生活を強いられ心境は複雑だが、気は紛れる。
   ◇    ◇
 模型は持ち運びを考え、50分の1サイズに仕上げた。町に戻って自宅の縁側で眺めるのが、震災後の2人の夢だ。「これと同じように家や庭を直さないと」。模型を手にすると、自然と会話と希望が生まれる。

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