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【攻防 電力マネー8】税収に合う事業捻出 核燃税 使途に不満も

 県庁の一室で県職員が向き合い、机の上には東京電力の原発が立地する双葉郡の地図が広げてあった。
 「まだ足りない。ここに道路をもう1本造れませんか」。当時、税務課員だった中井重幸(61)=県文化振興事業団事務局長、福島市=の提案で、土木部の担当者が新しく道路の線を地図上に引いた。福島第一、福島第二両原発で10基全てが営業運転を開始した昭和62年だった。
 核燃料税の課税期間は県の条例で5年間と定められている。県は5年ごとに課税期間を更新しながら、東電に税金の支払いを求める。62年は3期目の5年間に入る申請手続きの年だった。
 国の許可を得るには、原発立地に伴い県が必要とする安全や環境などの事業を「財政需要」として、国に示さなければならなかった。それらの事業の経費の一部に核燃料税の収入を充てる仕組みだった。
 2期目の5年間の税収は約260億円に上った。3期目も同じ程度の税収を得るには、5年間で総額700億円程度の事業をそろえる必要に迫られた。

■対象区域拡大
 「思い付く事業は何でも挙げてほしい」。税務課は庁内の各部署に呼び掛けた。事業金額がかさむ建設事業が優先され、原発事故に備えた避難経路にもなる道路や橋の建設、港湾の整備を掲げた。他に放射能の測定、防災無線の配備、住民の健康管理対策...。いくら積み上げても、なかなか目標の約700億円に達しない。担当課に事業の上乗せを求めた。
 前年の61年4月、チェルノブイリ原発事故が起きた。当初、国が対象にしていた事業は原発から10キロ圏内に限られていた。「原発事故が起きれば、山を越え、中通りにも逃げなくてはならない」。対象区域を浜通り以外にも広げさせた。双葉郡内の全学校の外壁を厚くして核シェルター化する構想さえ盛り込んだ。
 積み上げた事業の資料は膨大で、大型カバンいっぱいに詰め込んで自治省に出向き、1件1件説明した。「こんな事業が本当に必要なのか」。細かくチェックされた。午後8時ごろに始まった説明が、翌日午後10時ごろまで26時間かかったこともあった。何回も突き返された。

■予算は別
 しかし、自治省に説明した通りに核燃料税が事業に使われたかどうかは、税務課としては直接、分からなかった。
 核燃料税は使い道に制約のない一般財源として扱われた。このため、年度ごとに行われる県の予算づくりの段階で、それぞれの事業の優先度や必要性を話し合い、予算に組み込んだ。
 双葉地方から強い要望があった浜街道(県道広野小高線)の整備は、自治省への事業リストに継続的に盛り込まれたが、地元にとっては遅々として進まないように映り、核燃料税の使い方への不満につながった。
 県は平成14年、使い道が分かるよう、税収に見合う金額をいったん基金に入れてから、それぞれの事業に回す仕組みをつくった。核燃料税創設から15年が過ぎていた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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