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【攻防 電力マネー10】 東電との協議平行線 トラブル隠しで一転

片山総務大臣から税率引き上げ同意の通知を受ける佐藤栄佐久知事(右)=平成14年9月27日

 県税務課の関係者しか見ることのできない門外不出の報告書がある。題名は「核燃料税バトルの軌跡」。平成14年、税の大幅な引き上げを目指す県は、東京電力、電力業界、経済界などを相手に激しい攻防を繰り広げた。報告書には、その軌跡がA4判の100ページ近くにわたって、つづられている。
 バトル(戦い)の始まりは14年4月中旬。県幹部が東京・内幸町の東電本店に出向いた。税の引き上げを「唯一の納税者」に説明するためだ。
 価格課税で10%、重量課税で1キロ当たり1万1000円とし、実質的に税率を16.5%にする-。当時の7%を2倍強にする案だった。
 県側の出席者は2人。東電の担当部課長ら10人程度が待ち構えた。東電側は即座に反論した。
 「価格と重量にかけるのは二重課税だ。負担も重すぎる」「一円たりとも余計なものは払えない。訴訟も辞さない」

■包囲網
 県税務課長だった太田久雄(61)=日赤県支部事務局長、国見町=は月に何度も東電本店に足を運んだ。東電は過去の核燃料税の使い道などの膨大な資料を要求し、詳細に説明させた。県と東電との協議は30回程度を数えたが、意見は平行線をたどった。
 県議会からは東電との関係がこじれることを懸念する意見が出た。「落としどころ」を探る動きも出始めた。自民党議員会は、税率を一気に上げるのではなく、当初の引き上げ幅を抑える激変緩和措置を促した。
 県は6月、重量課税を当分の間、1キロ当たり6000円(現在は8000円)に下げることを決め、実質的な税率を13.5%とした。7月、県議会で税率引き上げの条例案が可決された。
 議会の開会中、全国の電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)は条例案の見直しを求める要望書を県に提出した。電事連の会長は東電社長の南直哉だった。県は「電事連は当事者ではない」と受け取りを拒否した。日本経団連も同様の意見書を総務大臣に出した。
 原発が立地する双葉地方の町からも東電との関係悪化を不安視する声が上がり始めた。

■急転直下
 事態は突然、変化した。8月29日、東電の「トラブル隠し問題」が発覚した。県と東電の事務レベルの協議は止まった。総務大臣片山虎之助は9月27日、知事佐藤栄佐久に対して引き上げへの同意を伝えた。その際、異例の条件を付けた。「引き続き納税義務者である東電の理解を得るよう努めること」
 県は税率引き上げの条例施行日を先送りし、東電への説明を重ねた。南に代わり社長に就いた勝俣恒久が12月25日、県庁を訪ねた。「納得はしていないけれども、やむを得ず了解する」。トラブル隠しで負い目のある東電が自滅した形となった。
 「トラブル隠しの発覚がなければ、どんな方向に行くか不透明だった」。太田はぎりぎりの局面を顧みる。
 原発事故後の23年度の税収は、前年度から繰り越された約8億円にとどまる。県は28日、県内の原発全ての廃炉を求める復興計画をまとめた。三十数年間にわたり、県財政の一角を支えた核燃料税は、課税対象も、根拠も失われる。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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