東日本大震災アーカイブ

【給食の放射性物質検査】機器不足拭えぬ不安 全食材手回らず 食後に結果分かる例も

※三島、広野、楢葉、富岡、双葉、葛尾の6町村は現在学校給食を実施していない。川内村は郡山市、大熊町は会津若松市、浪江町は二本松市、飯舘村は伊達市に給食を委託している。※喜多方市は8~11月まで民間業者に委託して放射性物質検査を実施した。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11日で10カ月となる。県内では給食用食材の放射性物質検査を独自に実施する自治体が増えているが、機材不足や手法のばらつきなど不安払拭(ふっしょく)への課題は多い。人口が多い市部は使用する食材の半分程度しか検査できないケースもあり、自治体関係者らは「国はもっと機器導入を支援すべき」と求める。

■1台250万円余
 県内の多くの自治体は、給食センターに検査機器を導入するなどして、独自に放射性物質検査を実施している。ただ、検査機器は一般的に250万円余と高価。各学校や給食センターに設置する場合、箇所数が多い市部は導入費用が数千万円になるなど自治体の財政負担は大きく、台数を増やすのは容易ではない。検査には、1品目当たり20分程度の時間がかかり、限られた台数での検査では使用する食材を全て検査することはできない。
 また、調理後の給食そのものを検査している自治体もある。ただ、検査結果が公表されるのは翌日で、子どもに提供された後だ。
 国は、今年度第3次補正予算で本県など17都県を対象に検査機器の購入補助費約1億円を予算化したほか、平成24年度当初予算案に学校給食モニタリング事業費として3億円を計上した。
 しかし、県内で給食を作る学校や給食センター約360カ所全てに検査機器を配備するには不十分なため、県は国に対し、さらなる予算措置を要望している。県教委の担当者は「児童生徒や保護者の不安を取り除くためには、検査態勢を整えなければならない」と強調している。

■27市町村が独自に
 福島民報社は県内59市町村を対象に、学校給食の放射性物質検査を行っているか調べた。学校給食を実施しているのは53市町村で、福島、郡山など27市町村が、既に検査機器を導入するなどして独自検査を実施している。
 各自治体の検査状況は【表】の通りで、空間放射線量が比較的低い会津地方でも多くの自治体が自主検査に踏み切っている。既に機器購入費を確保するなどして「近く実施予定」としているのは、会津若松や須賀川など14市町村。「検討中」は8市町村。残り4自治体は役場機能を移転している川内、大熊、浪江、飯舘の各町村で、避難先の自治体に給食業務を委託している。
 このうち、三春町は食材の納入業者に対し、使用する1日前に野菜のサンプルを町の「食品等放射能検査所」に持ち込むよう指示。検出限界値以下であることが確認された食材だけを給食に使用している。これまでに限界値を超過した食材はないという。

カテゴリー:3.11大震災・断面