県と4月に発足する原子力安全庁(仮称)は平成24年度、県内の母親約1万人を対象に、母乳の放射性物質濃度検査を実施する。希望を募った上で、検査費用の全額を補助する方向で調整している。東京電力福島第一原発事故を受け、自らの健康に不安を訴える母親は多く、授乳の悩みを解消することで安心して子育てのできる環境づくりを目指す。
県によると、県内の新生児は年間約1万8千人で、このうち半数近くの母親が母乳で子育てしている。残りの半数近くは粉ミルクを使用しているが、一時的に母乳を与えるケースもあるため、検査の対象者は1万人程度に上るとみられる。
採取した母乳を母親自身が民間の検査機関などに送付し、分析してもらうシステムを整える。1人当たりの検査費用は約5万円で、総事業費として5億6千万円を確保する。県の県民健康管理基金を財源として活用する見通しだ。
専門家がデータを分析した上で、検査結果を母親に通知する方針。ただ、結果の判断基準の設定、通知や相談・アドバイスをどう行うかが課題となっている。県は現在、医療関係者などと検討を進めており、3月末までに態勢を整える。
さらに、県は妊産婦の心身の健康状態を把握し、適切なケアを施すための調査を今月中に開始する。県民健康管理調査の一環で、母乳検査と併せて実施し、子育てに関する不安軽減につなげる。
県保健福祉部は「専門家や関係機関と検査態勢などについて検討を進める」としている。
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