東日本大震災

「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

  • Check

【振興への駆け引き2】優遇措置地域に定着 法制化実現残る不満

参院の委員会審議に臨む太田氏(前列右)。国会議員在任中、原発特措法の成立に力を注いだ

 元参院議員太田豊秋(76)が暮らす南相馬市は、東京電力福島第一原発事故による警戒区域や計画的避難区域を抱え、多くの住民が避難生活を送る。
 市内原町区にある自宅は約4カ月前まで緊急時避難準備区域だった。今も避難したままの住民も目立つ。「もっと安全対策をしっかり取るよう、国会議員として強く主張すべきだった」。影響の大きさを前に、悔しさが込み上げる。

■過去の教訓
 太田が県議を務めていた昭和64年1月、福島第二原発3号機の再循環ポンプが破損した。壊れた部品の金属粉が原子炉内に流れ込んだ。国内で前例のない重大事故だった。
 太田は自民党県連の幹事長などとして事故対応に当たった。「事故は起こり得る。住民が安心して生活するには避難するための道路や港湾の整備が欠かせない」。事故から得た教訓だった。
 立地地域の道路づくりの補助金などを増やす特別措置法(特措法)の実現が自身の大きな命題となった。県は約10年前から特措法の制定を国に要望していたが、暗礁に乗り上げていた。
 太田は県議会議長を経て平成5年に参院議員に転身後、直ちに行動を起こす。自民党の会合のほとんどに顔を出し、少しでも関連があると思えば、特措法を持ち出した。しばらくすると、太田が手を挙げれば、発言する前から「特措法だな」と声が掛かった。
 発電所の立地を担当する通産省(現経済産業省)の資源エネルギー庁は「既存の法律で対応できる」として、当初は協力的ではなかった。それでも太田は通い詰める。数年後、ようやく庁内に、思いを理解する幹部が現れ、一緒に特措法の条文案を練った。条文案を手に、毎日のように関係省庁の担当者に会った。
 参院議員2期目に入った12年12月、議員立法で「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」(原発特措法)が成立する。公共事業に対する国の補助率50%を立地地域に限って最大55%に引き上げるなどの優遇措置が盛り込まれた。

■次のステップ
 原発特措法は、国が前面に立って立地地域を考え、事業を進めるという、県が望んでいたような内容までは至らなかった。しかし、本県を含め全国の立地地域の道路建設などを後押しする制度として定着した。
 補助率のかさ上げがわずか5%で、対象も道路、港湾などに限られ、立地地域には不満も残った。太田は「成立直前に反対の動きが出た結果、限定した内容に修正された」と説明する。
 太田は19年に参院議員を引退する前、幅広い事業に適用できるように、法改正に向けた党内の中間報告を手掛け、注文を付けた。施行後10年の期限切れを前に、平成22年12月、10年間延長する法案が国会で成立した。
 原発事故の克服を目指す本県にとって、立地地域を中心とした振興策は大きな課題だ。原発特措法を強化して対応できるのか、全く別の新法が必要なのか-。あらためて特措法の存在が浮かび上がる。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

「3.11大震災・福島と原発」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧