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【福島の花見山除染】 観光の目玉手つかず 広大、人手が必要 園主の阿部さん「心癒やしてほしいが...」

福島市の観光名所の花見山。春になると色鮮やかな花が訪れる人を魅了する

 花の観光シーズンを前に福島市渡利地区にある名所「花見山」の除染が進んでいない。東日本大震災からの復興のシンボルの1つとして、市は花見山へ積極的な誘客を展開する考えだ。しかし、市内で比較的放射線量が高いとされる渡利地区で住宅除染が始まらず、私有地でもある花見山に着手できないのが現状。面積約5ヘクタールの山の除染には膨大な人手が必要となるなどの課題もあり、関係者の頭を悩ませている。

■安心できる状態に
 「花を見に訪れる人が安心できるよう除染は必要。ただ、まずは地域に住んでいる人たちを優先しなくては」。色とりどりの花が咲く春を前に、花見山の所有者で園主の阿部一郎さん(92)の表情は晴れない。
 花見山公園入り口の地上1メートルの空間線量は現在、毎時1.2マイクロシーベルト、山中の高い所で毎時1.5マイクロシーベルト程度だ。東京電力福島第一原発事故が起きてから観光客には放射線への不安が付きまとう。観光客の不安払拭(ふっしょく)のためには、少しでも線量を低減させなければならない。
 昭和34年の一般開放以来、「花から元気をもらって」との思いは変わらない。震災や原発事故で気持ちが落ち込むことも多い中、「こんなときだからこそ花で心を癒やしてほしい」と考えている。
 ただ、花見山がある渡利地区は市内で比較的線量が高く市の除染計画の優先地域だ。自分自身は、現在の放射線量を心配はしていない。だからといって、自らの考えを訪れる人に押し付けるわけにはいかない。「誰もが安心できる状態になってくれれば」と願っている。

■山より住宅
 福島市は昨年、東日本大震災のため花見山の観光事業を全て中止した。今年を復興の年と位置付ける瀬戸孝則市長は「花見山の観光を復興の目玉としたい」との考えを表明している。だが、除染についての明確な方針はいまだ示されていない。緊急の課題として認識はしているが、花見山のある渡利地区で計画されている「住宅」の除染より優先できないのが実状だ。
 市観光課は、観光PRのためには正確な空間線量の情報提供が必要とし、福島市観光物産協会のホームページ上で数値の公表を検討している。「一刻も早く除染し、線量を少しでも下げたい」と担当者は焦りを募らせる。
 渡利地区の除染は当初、大波地区に続き、今月下旬の開始を予定していたが、住民への説明などで2月上旬にずれ込むことが確実になった。このため花見山の除染もさらに遅れることは必至だ。担当者は「人の住んでいない山を先に除染するわけにもいかないし...」ともどかしさを口にする。

■間に合わない
 面積が5ヘクタールと広大な花見山の除染は、実施するとしても、さまざまな課題が横たわる。
 市は除染費用について、国の山林除染の1ヘクタール当たり60万円の補助の活用を検討している。ただ、短期間での作業になるため膨大な人員が必要で、確保しきれるか未知数だ。
 遊歩道周辺の落ち葉拾いなどはボランティアを募って実施し、手の届かない場所は業者への委託を想定しているが、いつ着手できるか分からない。
 観光バスが乗り入れる多目的広場は表土入れ替えで除染する方針だが、業者へはまだ発注していない。
 花見山周辺の環境整備と地域振興に取り組む花見山観光振興協議会の土田充会長(79)は「線量はどこまで下げれば安心してもらえるのだろうか。ともかく3月末までに除染を終わらせないとシーズンに間に合わなくなる」。気持ちは焦るばかりだ。

【背景】
 福島市渡利地区にある花見山は春の観光名所として知られ、4月をピークに全国から大勢の観光客が訪れる。入り込み数は平成20年が26万人、21年が28万7000人と年々増加し、22年には過去最高の32万人を記録した。東日本大震災のあった昨年は9万4000人と前年の約3分の1に激減した。渡利地区は国が特定避難勧奨地点の指定を判断する放射線量の詳細調査が行われた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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