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【振興への駆け引き3】安定税収「堅持を」 「脱原発」後も要請

松下忠洋経産副大臣に復興事業や政府予算の編成について要望する佐藤知事(右)=昨年7月

 知事佐藤雄平(64)は昨年7月、東京・霞が関にある各省庁に出向いた。行く先々で、復興事業への予算付けを求め、併せて平成24年度の政府予算づくりに向けた本県の提案を伝えた。
 数多い要望項目の中に、ある表現が盛り込まれていた。「法人事業税における電気供給業などに対する現行の収入金課税を堅持すること」との一文だった。
 電気供給業は電力会社を指す。東京電力福島第一原発事故から4カ月がたち、県は既に「脱原発」の県土づくりに向けた動きを進めていた。だが、要望書の一文は、長年にわたって県財政を支えてきた東電からの多額の税収を手放せない県の思惑が込められた。

■からくり
 震災前までの数年にわたり、本県の県税収入は年間で2000億円前後で、県予算の歳入全体の4分の1程度を占める。その中で最も大きな割合を占めるのが県内に事業所を置く法人が支払う法人事業税だ。税収全体の3割に当たる6~700億円が入っている。
 県は個別の企業の納税額を明らかにしていないが、東電によると、最近は年間で80億円前後の法人事業税を県に納めている。全体の税収が景気の影響を受ける中で、東電の納税額は安定している。税制に詳しい県関係者は「東電からの税収は群を抜く」と指摘する。
 東電から県に多額の法人事業税が入る裏には"からくり"がある。大半の企業は収入から経費などを引いた利益に当たる「所得」に対して、一定の税率が課せられる。
 しかし、電力会社、ガス会社、保険業の生保・損保会社の4業種には「収入」を対象に課税する「収入金課税」方式を採っている。電力会社は電気などを販売して得た「収入」に課税される。対象となる企業の経営が仮に赤字となっても課税できる仕組みだ。
 県によると、これらの企業は公共的な事業を営んでいるために、企業の規模に比べて利益が低く、一般的な所得課税方式を当てはめると、納税額が低く抑えられ過ぎる。このため、電力料金収入などの安定した収入金に課税する方式が認められている。

■他県からの羨望
 「福島県さんがうらやましい」。元県職員(68)は十数年前に開かれた東北6県の税務担当者会議で、他県の職員から掛けられた言葉を思い起こす。声の主は原発が立地していない山形、秋田両県の担当職員だった。
 バブル経済の崩壊に伴い、大手企業の撤退などで自治体の税収は大幅な減少の危機に立たされた。多額の税収の源となる原発を抱える本県に対して、各県は羨望(せんぼう)のまなざしを注いだ。
 元職員は「景気に左右されず、安定した収入が入った」と東電からの「うまみ」を強調する。多数の納税者がいる自動車税などは、納税を求める納付書や督促状の送付に億単位の経費が掛かる。納税者が東電などの優良企業にほぼ限定される税金は、手間が少なく、滞納の心配もなかった。
 「税収に折れない柱があることで、本県は独自の事業に安心して取り組めた」。元職員は発電所立地に伴う交付金や核燃料税と並び、東電からの法人事業税に支えられた本県財政の特徴を挙げた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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