東日本大震災

「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

  • Check

【振興への駆け引き4】新課税で減収の危機 県、全国と連携し阻止

 「新たな要望の準備を進めなくては...」。平成15年夏、県税務企画グループ参事を務めていた笠原久雄(60)=福島市=は対応を急いだ。
 経済産業省が総務省に「ある提案」を出した、との情報が入ったからだ。県税収入が大幅に減る内容で、県にとって見過ごすわけにはいかなかった。
 法人事業税の課税に当たって、翌年度から資本金1億円を超える大手企業に対して「外形標準課税」という新たな方式を部分的に導入する予定が組まれていた。
 外形標準課税は所得だけではなく、景気の変動を受けにくいとされる企業の資本金や人件費なども加味する。経産省の提案は、当初、対象外とされた電力会社にも、この方式を適用する趣旨だった。
 電力会社への課税方式である「収入金課税」を外形標準課税に置き換えると、税収の目減り分は県に入る法人事業税全体の1割超になることが分かった。約70億円の減収-。県幹部は担当職員が試算した見積もりに衝撃を受けた。
 危機感を抱く笠原ら本県の担当者は、全国の原発立地道県に足並みをそろえるように呼び掛けた。異例ともいえる早急な段取りで、県幹部が総務省や県選出国会議員に対して、収入金課税制度の存続を求めた。

■"うまみ"を失う
 収入金課税に基づき、本県は多額で安定した電力会社の収入への課税を、財政の大きなよりどころにしてきた。外形標準課税となれば、多くの発電所が立地する本県の優位性が結果として失われてしまう。
 その後、結局は本県などの要望が実り、翌年度の政府税制大綱に、電力会社への課税方式の変更が盛り込まれることはなかった。「県財政にとって、あれほどの危機は過去にあまりなかったのではないか」。笠原は、県の税収や財政を守る立場で難局を乗り切った当時を振り返る。
 県は今も原発立地道県と協力し、収入金課税制度の堅持を求め続けている。

■消費者の負担
 しかし、電力業界は税負担の重さの1つに収入金課税を挙げる。
 電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)の作ったパンフレット「電気事業と税金 2011」がある。その中に、象徴的な数字が次のように示されている。平成22年度に全国の電力会社10社が支払った法人事業税の総額は約1706億円だった。仮に、外形標準課税を当てはめると、3分の1程度の約570億円に減る。その減った分がそのまま地方の税収減となる。
 電源開発促進税、核燃料税、法人事業税、石油石炭税-。パンフレットは、消費者が負担する電気料金の中に、電力会社が納めるさまざまな税金が含まれていることを説明している。
 一般家庭が支払う1カ月の電気料金を約6900円とすると、このうち、消費税を含めた税金関係(租税公課)は13%程度に当たる約900円になる。電力業界の税負担率が他の産業に比べて極めて高く、消費者が支払う電気料金にものしかかっている、との見解だ。
 東京電力福島第一原発事故を受け、電力会社の在り方やエネルギー政策を見直す議論が始まった。県や市町村は、こうした動きが税収や財政に与える影響を注視している。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

「3.11大震災・福島と原発」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧