東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【サテライト設置8校1期志願者激減】学校存続できるのか 「大勢来てほしいが...」

双葉高、富岡高、双葉翔陽高のサテライト校が設置されるいわき市のいわき明星大。各校の関係者は生徒確保に頭を悩ませている

 県立高校入試1期選抜で、今春以降もサテライト校を設置する相双地区の8校の志願者が募集定員を大幅に下回った。生徒を確保するため6校では自己推薦で入学できる1期の定員枠を増やしたが、予想以上の低倍率に関係者はショックを隠せない。このままでは学年が成り立たない懸念さえ出ている学校学科もある。各校や県教委は生徒確保へ重い課題が突き付けられた。
 「結果を冷静に受け止めるしかない」。1期選抜で志願者が2人しかいなかった浪江高の高梨洋史校長は厳しい表情を浮かべた。
 今春から2つのサテライト校を集約し、本宮市の本宮高の仮設校舎で授業が始まる。しかし、現在の1、2年生83人のうち約20人は他校への転入学を希望している。「大勢の生徒に入学してほしい。ただ、不便を考えると無理強いすることもできない」と語る。
 1期選抜の定員32人に対し、志願者が11人だった双葉高。佐藤秀美教頭は「長年、地域の期待を背負ってきた伝統校だけに、2期では1人でも多く受験してほしい」と願う。相双地区の高校と合同で学校説明会を開いたが、訪れる生徒は大幅に減り、厳しさは感じていた。「困難な状況だが、質の高い教育を目指して努力するしかない」と決意している。
 富岡高では校長と教頭が県内の中学校約60校を回った。半谷佳之教頭は「春以降も高校は4つに分かれたままだが、特色ある教育ができることを分かってほしかった」と話す。
 「生徒数が少ないままだと総合学科の特徴が出せなくなってしまう」と案じているのは双葉翔陽高の小野寺典子校長だ。総合学科の同校は生徒数が少ない場合、選択授業の種類を減らすことを検討するしかない。
 唯1、志願者が定員を上回る学科があった小高工高の伊藤裕隆校長は「相双地方唯一の工業高校として、評価された結果だと思う」と話すが、他校の状況に表情は晴れない。
 「定員割れをさせたくはないが...」。県教委の担当者は懸念している。1期選抜で志願者が定員を大きく下回った高校が、2期選抜で定員を満たすことは難しい。
 各校の伝統や校風は地域に根差しており、地元を離れたサテライト校で十分にアピールできるかも疑問だ。そんな中で、説明会を開いても受験生に何を訴えられるのか。
 また、仮設校舎では教室や、部活動に取り組むグラウンドや体育館を十分に確保できない。さらに親元から離れる宿泊施設で生活するケースもある。サテライト校には不利な条件がそろっている。
 すでにほとんどの中学校で保護者面談を終え、受験生は志願先を決めている時期だ。今後、2期選抜の出願受け付けが始まるが、これから各校が志願者を増やすのは容易ではない。
 双葉郡から避難している受験生はそれぞれの思いで自らの進路を決めている。
 楢葉町からいわき市に避難している中学3年の女子生徒(15)はいわき市内の私立高校への進学を決めた。震災前は地元の双葉郡内の高校を志望していた。避難先で暮らすうちに、いわき市の高校の方が「勉強や部活動をする環境が整っている」と考えるようになったという。
 一方、郡山市の借り上げ住宅で避難生活を送る富岡町の中学3年の女子生徒(15)は富岡高を志願した。中学入学時から決めていた高校だ。ところがサテライト校は郡山市外にあるため、合格すれば家族との離れた生活になる。思いは複雑だ。「不安はある。けれども頑張る」と自らの選んだ道を進む。
 浪江高を卒業した周原仁さん(35)は「自分たちにはどうすることもできないのか」と、もどかしさを口にする。小学校から高校まで浪江町内の学校に通った。学校は古里そのものだ。「存続できるのだろうか...」。今回の定員割れに不安がいっぱいだ。
 「学校の今後を心配する卒業生は多い。非常に残念」。双葉高の同窓会長の小山恒雄さん(80)は表情を曇らせた。甲子園に3度出場するなど、文武両道の校風で知られる母校だ。「伝統をつなぐため同窓会としてできることは何でもしたい」と力を込めた。
 相双地区の関係者は地元の高校の志願者が少なかったことに、複雑な思いを抱いている。
背景
 県立高校入試1期選抜の出願で、平成24年度も引き続きサテライト校を設置する相双地区の8校12学科のうち、小高工・機械を除く8校11学科で定員を下回った。浪江・普通は定員16人に対して出願が2人で、倍率は0.13倍など軒並み前年から大きく落ち込んだ。県教委は生徒が分散している状況を解消するためサテライト校を平成24年度に原則として1カ所に集約する。サテライト校の移転・集約先と各校の倍率は【表】の通りで、通学が困難になる生徒のためには南相馬、福島、いわき、郡山の各地区に宿泊施設が用意される。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧