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【振興への駆け引き6】資産評価 税収を左右 事故の影響 見通せず

 大熊町は平成23年度、原発事故前の評価を基に東京電力に原発の固定資産税を課した。しかし、24年度以降の課税では新たな問題を突き付けられている。
 東京電力福島第一原発は、発電設備6基のうち、1号機から4号機までの建屋や発電設備などが激しく壊れている。
 原形をとどめない施設に、これからも固定資産税を掛けられるのか-。
 町税務課長の島和広(52)は悩む。「このままでは原発の資産評価が下げられ、税収が落ち込んでしまうかもしれない。そうなれば町の財政に大きな穴があく」

■破損状況
 原発の土地や建物などのうち、原子炉などの設備は償却資産に当たる。平成24年度の課税額の基になる資産評価額は、総務省が1月1日時点で算定し、3月下旬に立地町に通知する。
 総務省は東電の申告に基づき、資産評価を出す。だが、福島第一原発の事故による破損状況が評価にどう影響するのかは不透明だ。仮に、発電能力を失った各設備の資産評価がゼロと見なされれば、税収は見込めない。
 一般の家屋と同じ扱いの原子炉建屋については、町が自ら損傷の程度を評価する。職員が事故現場に立ち入れない中で、正確に評価できるのかという課題もある。
 ただ、町にとってマイナス面ばかりではない。放射性物質の飛散を抑える1号機の建屋カバーをはじめ、復旧作業に伴う多くの設備が造られた。町は新たな設備が全体の資産評価にどう反映されるかも注視している。

■県の取り分
 原発立地に伴う固定資産税は長年、大熊町の歳入の大きな柱を担ってきた。自由に使える元手が豊富であればあるほど、町は独自の施策を進めやすい。公共料金、住宅団地の造成、下水道の整備、医療費の助成...。町民の暮らしに関わる予算に税収を充ててきた。
 手厚い住民サービスを求めて町外から移り住んでくる人もいた。「住みやすい町だった。1人の町民として誇りに思ってきた」。町職員の1人は胸を張る。
 原発立地地域の固定資産税は県の財政も潤した。大規模な償却資産の課税限度額は市町村の人口規模などに応じて決まり、限度額を超えた分は自動的に県の収入となった。
 最近10年間を見ると、限度額を超えたのは8年間あった。この間、県の取り分は平成16年度には最大で6億8000万円になり、総額でおよそ38億円もの収入があった。「原発から入る税金が県に行くのは感情的には面白くはない部分はあった」。町関係者は複雑な思いを抱く。
 県にも言い分がある。県税務課長佐藤篤信(59)は指摘する。「市町村間の財政上のバランスを取るために法律で決まっている。大規模な施設があることによって県が果たすべき役割も出てくる」
 原発事故で福島第一原発の1号機から4号機までの廃炉方針が打ち出された。施設が元に戻ることはない。立地町も県も長年、当てにし続けてきた固定資産税の先行きは見えない。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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