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【原発周辺の除染工程表】帰還困難区域「時期示せ」 避難指示解除準備、居住制限区域 着実な実行望む

警戒区域などで行われている除染モデル実証事業。避難者は工程表通りに進むのか不安を抱いている=12月4日、大熊町役場

 26日、環境省が発表した避難区域の除染作業の工程表で、新たに設定される帰還困難区域の除染開始時期が示されなかったことに住民から不満の声が上がった。避難指示解除準備、居住制限両区域は、除染完了の時期が示されたが、中間貯蔵施設の建設場所が決まらない中、「本当に工程表通りに進むのか」と疑問の声も。放射線量によって帰還時期が異なることに、「地域が分断される」との懸念が広がった。

■帰還いつに
 「大熊に戻ることを諦めるしかないのか...」。会津若松市の借り上げ住宅に暮らす大熊町の無職栃本正さん(59)は、工程表の発表にため息をついた。
 昨年、一時帰宅で測った自宅の空間線量は毎時10マイクロシーベルト前後。線量だけで見ると年間50ミリシーベルトを超える「帰還困難区域」に該当する。「除染が完了する日程どころか、本格的な除染を開始する時期も示されなかった。一刻も早く示してほしい。そうしないと帰還が遠のく...」と、つぶやいた。
 双葉町で電気工事店を営み、本宮市で事業を再開した横山久勝さん(57)は「除染をしても放射線量の高い双葉町で元の生活をすることは無理だと思う。除染をするより、避難者の生活再建に力を入れるべき」と強調した。
 埼玉県で暮らす双葉町の元原発作業員の男性(58)も放射線量の高い町に戻ることは諦めている。「無駄な除染をするぐらいなら、そのお金を生活に関わる経費に回してほしい。どうしても町に帰りたいという高齢者も安心できる仮の町をつくってほしい」。東京電力福島第一原発事故から10カ月以上たっても生活が安定しない現状にいら立った。

■大切な第一歩
 楢葉町から避難し、いわき市の借り上げ住宅に会社員の夫(46)、公務員の次男(20)と3人で生活する主婦金井直子さん(46)は「除染は古里に戻るための大切な第一歩。工程表を着実に実行してほしい」と工程表の実現に期待した。
 ただ、地域によって年間線量に大きな差があり、「除染」イコール「すぐに帰還」とは考えていない。「古里に戻りたい気持ちは強いが、行政、経済、教育など全てが元通りにならなければ生活ができないのでは」
 三春町の仮設住宅に避難している葛尾村の無職松本操さん(62)は「時間をかけずに効果を上げる除染方法を確立してほしい」と求める。村内の自宅周辺の空間線量を考えると、避難指示解除準備区域になる見通しだが、村内には線量がさらに高い地域もある。「若い世代や線量が高い地域の人も戻れるように除染を進めてほしい」と注文した。
 「中間貯蔵施設の建設場所が決まっていないのに本当に実現できるのか」。計画的避難区域の飯舘村に自宅があり、福島市の借り上げアパートで避難生活を送る自営業の男性(29)は疑問を投げ掛けた。

■線引き考えて
 放射線量を基準とする除染の線引きで町が分断されかねないとの懸念も強い。
 埼玉県に避難している双葉町の元トラック運転手菅本芳邦さん(50)の自宅は福島第一原発から約10キロ。「除染はやらないよりましかもしれないし、古里に帰りたいと思う。だが、新たな帰宅困難地域などの線引きで町が分断されてしまえば、生活インフラの復旧は難しい」と指摘する。
 浪江町から猪苗代町に避難している自営業小野田浩宗さん(50)は「避難区域の見直しの前に町内全域の除染をすべき。一部だけ除染して戻っても町として成り立たない」と訴える。小学生から高校生まで娘3人がおり、「子どもたちが帰れる環境づくりをするため、政府は町民の意見を聴きながら進めてほしい」と望んだ。

【背景】
 政府は4月1日にも東京電力福島第一原発事故に伴い設定した警戒区域と計画的避難区域を年間被ばく線量に応じ、20ミリシーベルト以下を「避難指示解除準備区域」、20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下を「居住制限区域」、50ミリシーベルト超を「帰還困難区域」の3つに再編するとしている。3区域に該当する11市町村を国直轄で除染や廃棄物処理を行う「汚染特別地域」に指定。除染モデル実証事業を実施しているが、作業に対する住民の同意の取り付けや、現場に向かう道路の復旧が進んでいないため計画が遅れている。

首長「方法、範囲は...」 分断を懸念 時期尚早の声も

 環境省が公表した東京電力福島第一原発事故の警戒区域内での除染の工程表について、関係首長からは一層、詳細な計画の提示や早急な実施を求める声が出た。  大熊町の渡辺利綱町長は「放射線量の数値目標や除染方法、範囲などを具体的に示してほしかった」と語った。双葉町の井戸川克隆町長は「放射線量の高い地域では無理に実施しない方がいい。作業する人たちの被ばくを考えれば、優先順位を付けるのは当然」との考えを示した。  浪江町の馬場有町長は「新たな避難区域ごとに除染を実施するのであれば、町が分断されるのではないか」と懸念。葛尾村の松本允秀村長は「とにかくしっかりと計画を作り、確実に除染を実施してほしい」と訴えた。  富岡町の遠藤勝也町長は「精度の高い区域分けをした上で工程表を示すべきだ。(現時点での発表は)時期尚早」と批判した。楢葉町の草野孝町長は「1日でも早く除染を進めることが帰還につながる。町民と十分に話し合いながら(除染作業の)条件を整えたい」と力を込めた。  川内村の遠藤雄幸村長は「区域全体が避難指示解除準備区域になるよう求めていく。(村が除染している)旧緊急時避難準備区域と一緒に除染を進めたい」と方針を語った。  南相馬市の桜井勝延市長は「市民の帰還への道筋が多少なりとも見えてくるが、スピード感を持って取り組むよう強く要望する」と強調した。田村市の冨塚宥●市長は「要望していた工程表の公表が実現されたのは評価する。除染の開始は早ければ7月というが、できる限り前倒ししてほしい」と要望した。  川俣町の古川道郎町長は「計画的避難区域に指定されている山木屋地区の除染は時期を分けることなく同時に進めてほしい」と求めた。飯舘村の菅野典雄村長は「工程表を出すことは評価するが、土地所有者の許可を得るのに時間がかかり、ゆったりしている印象だ」と感想を明らかにした。

※●は日ヘンに景

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