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【県産材の放射線風評被害】 製材業者 自主検査へ 基準設け安全証明 国などの動き鈍く先手

いわき市内の木材市場に集められた原木。風評被害への懸念が広がる=28日

 汚染砕石問題を受けた風評被害が県産木材にも広がり、県内の製材業者らが取引先から安全かどうかを問われたり、木材の安全証明書の発行を求められたりするケースが相次いでいる。県木材協同組合連合会(県木連)は国や県に出荷基準を早期に設けるよう求めているが、実現していない。県産材の販売に大きな影響を及ぼしかねないとして今後、独自に基準を設定して自主検査し、安全性をアピールする方針だ。

■納得されない
 県木連によると、原木の放射線量が高い場合でも、製材の過程で樹皮を剥ぎ取って加工した段階でほとんど測定されなくなる。しかし、県中地方の製材業者は「汚染砕石問題が起きて以降、関東地方の顧客の反応が厳しくなった」と感じている。出荷する際、「原木の仕入れ先を示す証明書を付けてほしい」と求める顧客が増えているという。ただ、大量の木材を扱っているため、1本ずつ詳細に産地を明記するのは時間的に難しいのが実情だ。
 県北地方の製材会社の経営者は28日、取引先から東京電力福島第一原発事故前に伐採した木材を出荷するよう求められた。事故前であることを説明したが、結局相手に納得してもらえなかったという。今後、取引にどう影響するかは不透明で、担当者は「口で説明しても、疑われてしまう」と嘆く。
 県中地方の木材仕入れ・販売業者は、取引先からの問い合わせに応えるため、工場内の空間放射線量の独自の測定も始めている。
 いわき市産材を中心に取り扱う市内の平木材市場の松本司経理部長(48)は「現段階では価格や取引量に影響は出ていないが、今後、汚染砕石問題などが波及する可能性がある」との懸念を口にする。
 県木連の会員事業所のうち、木材出荷に関わるのは170社程度あり、製材量は年間約20万立方メートルに上る。
 関係者によると、県内には仮設住宅建設などの復興需要があるため、何とか原発事故前の出荷量を保っている状態だ。

■早く安心を
 県木連が導入を目指す自主検査では、製材工場単位で出荷時に木材表面の放射線量を測定する。ある程度の数を抽出して測定する方向で調整中で、独自に定めた出荷基準を上回った場合は出荷を自粛する。基準を下回っていれば安全証明書を発行する。伐採地や伐採地の空間放射線量などを記載することも検討している。
 製材業者や建築業者、設計士らで構成する認証制度検討委員会を設け、現在、検査の方法や体制などを詰めている。遅くとも4月までには開始したい考えだ。
 県木連の宗形芳明専務理事(62)は「今後の復興住宅建設に際しても風評被害が起きたら木材業界の死活問題にもなりかねない。1日も早く安心を確保することが不可欠」と強調する。

■試行錯誤
 基準づくりに向けては課題も少なくない。外国のケースなどを参考に検討しているが、どの程度まで厳しくすれば消費者の安心を得られるのか、見極めが難しい。
 当初、原発の警戒区域内に一時帰宅する住民らが区域外に退出する際、除染が必要となる数値を採用する案もあった。しかし、「数値が高すぎる」との意見が出て、さらに低いレベルを模索している。
 県木連はこれまで林野庁や県に出荷基準の設定を再三求めてきた。「本来であれば、行政機関が基準値をつくるべきなのだが...」。関係者の間には行政側の遅い対応に不満もくすぶる。検査には多くの検査機器が必要になるため今後、国、県に財政支援も強く求めるとしている。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故で放射性物質に汚染された疑いがある砕石やコンクリートが建設材料に使われていた問題が1月中旬に発覚。最初に高い放射線量が確認された二本松市のマンションを含め、一戸建てや集合住宅でも使用されていた。流通先は約800カ所に上るとみられ、国、県の調査は難航している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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