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【振興への駆け引き9】東電、財団通じ寄付 直接の関係を避ける

郡山市ふれあい科学館が入居するJR郡山駅前のビッグアイ。科学館の整備費の一部には間接的に東電からの寄付を充てた

 「準備していたのに、おかしいじゃないか」
 平成6年、郡山市役所の一室で市幹部は不快感を示した。東京電力が以前から市内に建設を申し出ていたドーム付きサッカー施設の計画が突然、中止された。
 東電の担当者は「ご迷惑をお掛けしました」と、ただただ謝るばかりだった。市幹部は担当者の説明に納得できず「東電本店に直談判に行く」と怒った。
 1年前の平成5年、東電はサッカー施設を市内に建設することを市に打診していた。東電は「明治時代以来、発電のために県内全域で世話になっている。県の中心部にある郡山市に造りたい」と説明した。
 候補地はビッグパレットふくしまの建設予定地付近だった。市は地域振興の核の1つに位置付けようとした。市幹部は県外で既に建設されたドーム付きの施設などを視察に出掛けた。
 サッカー施設の建設には、先に決まっていた都市計画を変更する必要があった。県と市が内密に準備を進めた。外部への情報漏れを防ぐために、県と市の担当者の打ち合わせは口頭のみで、メモを取ることを禁じたほどだ。
 東電が市に計画の中止を通告してから間もなく、東電は後にJヴィレッジ(楢葉・広野町)と名付けられるサッカー施設の建設計画を発表した。平成6年8月だった。

■おわび
 東電はサッカー施設の代わりに、全ての県民向けの施設を郡山市内に建てるための寄付を市に伝えた。当時の市幹部によると、市が寄付をあらためて求めたわけではなかった、という。
 寄付は平成13年、市街地の中心部にオープンした「ふれあい科学館」に結び付く。JR郡山駅西口に建つビッグアイに入居し、プラネタリウムを備えている。市幹部は「東電がサッカー施設の中止を『おわびした』寄付だった」と今も受け止めている。
 だが、表向きは東電から市への直接的な寄付ではなかった。両者の間にある団体を介在させた。教育施設に備品を寄付する財団法人「県青少年教育振興会」。市内に事務局を置き、民間人がトップを務めていた。東電がいったん、財団法人に30億円を寄付し、財団法人が市にあらためて寄付する形にした。直接の寄付関係を避けたい市と東電の思惑が一致した。東電にとっても、他の市町村から同じような寄付を催促されることを避ける狙いも込められたといわれる。

■猪苗代湖
 市内には猪苗代湖を源にした安積疏水を使う沼上、竹之内、丸守の3つの水力発電所が立地し、古くから電気を供給してきた。このうち、市内熱海町にある沼上発電所は110年余り前の明治32年に地元の紡績会社が建設し、県内で2番目に古い。竹之内、丸守の各発電所は大正時代に運転を始めた。
 発電所の持ち主は変遷を経ながら、今は東京電力となっている。「原発増設が目的なら、東電は郡山市に寄付するメリットはない。水力発電によって、市と東電の間に共存共栄の歴史があったからだ」。市幹部は東電の寄付の根拠を歴史と結び付けた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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