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【24年産米作付け】線引き難航必至 農家「科学的根拠を」

 JA福島中央会は平成24年産米の作付け方針で、23年産米の放射性セシウムが100ベクレル超~500ベクレル以下だった地域については、食品の新基準値100ベクレルを超える危険性が大きいか小さいかで作付けの可否を判断することにした。農林水産省はこの方針を参考に作付け制限について最終決定する考えだが、生産者が納得できる線引きができるのか、危険性の根拠をどう示すのかなど課題は多い。

■明確な基準なし
 県の調査で1キロ当たり100ベクレル超~500ベクレル以下のコメが複数検出された二本松市旧小浜町。「国には制限の考え方を明確に示してほしい。不安を抱えたままでは、コメを作る意欲が高まらない」。同地区で長年、農業を営む男性(57)は雪に覆われた水田を前に不満をあらわにした。
 JA福島中央会の方針では、24年産米で食品の新基準値の100ベクレルを超える危険性が小さい地域は除染などを条件に作付けを進め、地理的な要因などで危険性が大きい地域は作付けを制限する。新基準値超えのコメの分布状況や数値の大小を基に総合的に判断するとした。農林水産省穀物課も「同様の考え方になるだろう」としているが、明確な基準はなく、可否を決めるには難航が予想される。
 JA伊達みらい管内では、県の調査で多くの旧町村で100ベクレル超のコメが見つかった。しかし、担当者によると、あくまで旧町村内の一部で、100ベクレルを超えなかった水田も多い。「字単位の制限なのか、放射性セシウムが流れ込む水系で分けるのか。線引きは難しい」と指摘する。
 同市保原町の農家佐藤九兵衛さん(89)の水田では、放射性セシウムがほとんど検出されなかったが、同じ旧町内には100ベクレル超の農家がある。「例年通り作付けできるのかどうか」と不安な表情を浮かべる。

■要因解析
 作付け制限する場合、新基準値超のコメの分布など状況分析だけで生産者の理解を得られるのかという課題もある。
 山間部に多かった500ベクレル超のコメと違い、100ベクレル超は平たん部でも検出されている。庄條徳一JA中央会長は「制限の必要性と根拠を国が明確に示すべき」と、100ベクレルを超えた土壌や環境の分析を急ぐよう国に訴える。
 福島市の農家男性(70)は「科学的な根拠が示されなければ、仮に作付け制限と言われても簡単には納得できない」と憤る。だが、暫定基準値500ベクレル超の原因ですら、農水省と県は「カリウム不足など複数の要素が絡む」との中間報告にとどまっており、100ベクレルを超える原因を明示するのは容易ではない。

■割れる意見
 伊達市は「原則作付け」の姿勢を崩さない。市担当者は「作付けを一度やめたら、土地を元に戻すのに時間が掛かる。生産者の意欲も減退してしまう」と懸念する。
 JA福島中央会の方針決定過程では、組合によって意見が割れた。中通りのある組合長は全袋検査を前提に「コメ農家は作ってなんぼだ。できるだけ生産したい」と訴えた。一方で、放射性セシウムがほとんど検出されなかった地域の組合からは「今度こそ基準値を超えたら終わりだ。微量でも検出された地域は作付けを見送り除染や土壌改良に専念すべき」との声が上がった。生産意欲の維持とブランド回復との挟間での苦渋の決断だった。
 農水省は市町村との協議を踏まえ、2月中に作付け制限の結論を出す。同省穀物課は「生産者や行政の願いがある一方、消費者や流通業者の立場もある。作ったコメが無事に売れるかどうか。そこを判断する必要がある」とし、一定の制限は必要との考えを示す。

【背景】
 JA福島中央会は26日、生産者の意向として作付けの方針を示した。1キロ当たり500ベクレル超は国の方針通り作付けを制限するとしたが、100ベクレル超~500ベクレル以下の地域については、県のコメの検査結果を基にした国と市町村の個別の協議に委ねた。制限範囲の判断、作付け条件とされる除染の実現には課題が多い。23年産米の県の全戸検査では、県が比較的放射線量が高い福島、伊達両市など6市22旧市町村で実施した結果、検体5291点のうち、100ベクレルを超えたのは5.5%(292点)だった。23年産米は国の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)超えが相次いだ上、風評被害や県の全戸検査の影響もあり、出荷が滞っている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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