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【県の18歳以下医療費無料化】小4から助成有力 制度設計で試行錯誤

 県は、東京電力福島第一原発事故を受けた県民の健康管理と子育て支援を目的に30日、18歳以下の医療費無料化の本格的な検討に入った。市町村が実施している現行制度の内容を踏まえ、小学4年~18歳以下を県の助成対象にする案が有力だ。ただ、恒久的な財源確保の見通しは依然立っていない。試行錯誤の制度設計を強いられ、平成24年度の開始に向け課題は山積みしている。

■見切り発車
 「県独自に制度を続けていく財源が将来にわたって確保できるのか。まさに見切り発車だ」。県庁西庁舎7階の保健福祉部。児童家庭課の担当者は、政府が突き付けた18歳以下の医療費無料化見送りにため息をついた。
 県内市町村は現在、独自に医療費助成に取り組んでいる。50市町村が中学3年までの入院・通院を無料とする一方、4市は小学3年まで通院を無料化するなど内容にばらつきがある。
 県は対応に差がある小学4年~18歳の医療費を全額補助することで市町村間の平準化を図り、小学3年までは各市町村が負担する案を検討している。費用は年間40億円規模に上ると試算する。総額2800億円の県民健康管理基金を財源とするが、このうち1800億円が除染作業への充当分だ。残り1000億円については、今後30年にわたる県民健康管理調査の関連費用を捻出する必要があり、医療費無料化の財源は限られる。
 基金の切り崩しを極力抑えるため県の助成対象を中学卒業後から18歳までに絞り込む案も浮上している。ただ、現在の市町村の制度と組み合わせた場合、無料化されない年齢区分が生じる自治体も出るなど、財源を節約した上で公平な制度を目指すのは容易ではない。
 原発事故で多くの子育て世代が県外に移る中、県は医療費無料化で安心して育児できる環境を確保し県民の県内定着や県外避難者の帰還促進を目指している。低線量被ばくの長期的な影響も不透明で医療費無料化は県民健康管理調査とともに健康対策の柱となる。県内部には「本来は国が実施すべき」との見方も根強く、今後、何らかの形で財政支援するよう国に求める方針だ。

■県外避難者
 県外に自主避難し、住民票を移した18歳以下の医療費の取り扱いも難題だ。県は「自主避難した場合でも、県内にとどまったケースと同じく救済するのが筋」との立場に立つ。
 ただ、自主避難者が県外で支払った医療費をどのように把握し、転居先の都道府県と調整するかや、県内に戻らない場合、いつまで助成を続けるのかなど課題は多い。県の平成24年度の予算編成は最終局面を迎えている。職員の1人は「このままでは、24年度の制度開始に間に合わない恐れもある」と険しい表情を見せる。

■市町村の医療費無料化の状況
▼入院、通院とも18歳以下
 大玉
▼入院、通院とも中3まで
 福島、相馬、二本松、田村、伊達、本宮、桑折、国見、川俣、鏡石、天栄、下郷、檜枝岐、只見、南会津、北塩原、西会津、磐梯、猪苗代、会津坂下、湯川、柳津、三島、金山、昭和、会津美里、西郷、泉崎、中島、棚倉、矢祭、塙、鮫川、石川、玉川、平田、浅川、古殿、三春、小野、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、新地、飯舘
▼入院、通院とも小6まで
 白河、須賀川、矢吹
▼入院は中3まで、通院は小6まで
 喜多方
▼入院は中3まで、通院は小3まで
 会津若松、南相馬
▼入院は小6まで、通院は小3まで
 郡山、いわき

【背景】
 東京電力福島第一原発事故を受け、佐藤雄平知事は昨年11月、全額国費による18歳以下の医療費無料化を野田佳彦首相に要望した。野田首相は「健康管理が最優先だ。関係閣僚に検討を指示したい」と述べ、今月8日に来県した際には「重要な課題であり、政府内でしっかり検討する」と約束した。しかし、財務省内には「軽い疾病と原発事故に因果関係は見いだせない」「一部の国民への医療費補助は税の公平性を欠く」などの反対論が浮上。官僚の原則論に押し切られる形で、野田首相は見送りを決めた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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