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今を生きる 大熊の居酒屋、震災で閉店 夫婦の店 もう一度 お客と再会願う

来場者にお礼を言いながらラーメンの器を片付ける美和さん(右)

■喜多方のラーメンフェスタ手伝う 川上美和さん
 「ありがとうございます!」。19日まで喜多方市で開かれている「全国ラーメンフェスタ」会場に、ひときわ元気な声が響く。食器返却係を仕切るのは、大熊町から会津若松市に避難する川上美和さん(35)だ。食事を終えて満足そうな来場者と言葉を交わすと、ふと古里で働く人たちの顔が浮かんでくる。
 平成20年12月、大阪府出身の夫宏一さん(39)と大熊町のJR大野駅前に居酒屋「楓」を構えた。「カエデの木の枝のように、店も大きく広げていきたい」と願いを込め、敷地にカエデの木を植えた。古民家のようなたたずまいの店は、東京電力福島第一原発の作業員の憩いの場だった。人気メニューはたこ焼きと太麺の焼きそば。「どんなに疲れていても、お客さんの笑顔を見ると心が安らいだ」。毎日が楽しかった。
 東日本大震災後で店舗に損壊はなかった。「いつでも営業できる状態。でも人がいない」。第一原発から4.7キロ。一時立ち入りした際、荒れ放題のカエデの木を見てがくぜんとした。
 古里に戻れるかは分からないが、再び夫婦の店を持つ夢は捨てていない。昨年7月から暮らす会津若松市の仮設住宅では、宏一さんがハム、ベーコンの薫製作りに励む。店舗経営とともにインターネットでの商品販売も視野に入れる。
 美和さんは県緊急雇用創出基金事業「がんばろう!"絆"づくり応援事業」に応募。11日から「蔵のまち喜多方冬まつり」会場で働いている。温かいラーメンやそばを提供する出店者を見て、うらやましいと思った。一方で意欲も湧いた。「おいしかった、と言われる小さな幸せを、早く取り戻したい」。お客さんの笑顔との再会を願っている。

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