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【「福島方式」渡利地区除染】住宅密集 試行錯誤 隣家に飛散「だめ」 仮置き場決まらぬまま

住宅除染で庭の表土を除去して容器に入れる作業員=22日、福島市渡利地区

 福島市渡利地区で22日に始まった住宅除染は、初めて住宅密集地で面的に行う作業となり、隣家に放射性物質を飛散させないなど試行錯誤の対応が続く。仮置き場は依然、確保できず、削った表土は住宅敷地内に保管してもらう「福島方式」で進めるが、道路や側溝の除染は先送りされるという課題を抱えたままだ。一方、比較的高い放射線量に不安な日々を過ごしてきた住民は、ようやくスタートした除染の一日も早い完了を望んでいる。

■期待の声
 「この日を待ち望んでいた。市内の除染が着実に進むことを期待したい」。福島市の住宅除染で自宅の除染が行われた同市小倉寺の会社員真鍋幸男さん(65)は笑顔を見せた。
 ただ、住宅密集地での大がかりな除染だけに、試行錯誤の部分も多い。屋根や壁、駐車場などを大量の水を使って高圧洗浄するが、隣接する住宅に放射性物質を含んだ水などが飛ぶ懸念がある。
 このため隣に除染済みの住宅がある場合には、除染中の住宅の周囲をブルーシートで覆いながら作業をするなど、細心の注意を払う必要が出てくる。
 近くに通学路がある現場も多く、登下校時の子どもに飛散しないように付近に誘導員を配置する方針。さらに作業期間中、近隣の小中学生らに登下校時のマスクや帽子の着用も呼び掛ける考えだ。

■山林対策に課題
 渡利地区は住宅地に山林が隣接している場所が多い。山林から流れ込む雨水などが放射性物質を地区に運び、除染しても再び線量が上がってしまう可能性があるという。市は今後、雨水のルートを調査する方針で、側溝を新たに設け、住宅地に流れ込むのを防ぐことも検討している。
 一方、山林の放射線量も課題だ。住宅から5メートルの範囲内で山林の落ち葉拾いや間伐などにも取り組み、空間放射線量の低減を目指す。さらに、住宅除染を終えた段階で、山林の除染範囲を20メートル奥まで広げる。市の担当者は「生活空間の放射線量を下げるためには周辺山林の除染が欠かせない」と指摘する。

■敷地内に抵抗感
 市は仮置き場設置に向け、渡利地区住民との交渉を昨年末から進めてきた。仮置き場は決まらないが、除染の要望は強い。市は当初計画よりも約1カ月遅れて除染に着手した。だが、仮置き場がないため、道路や側溝の除染はできないという。
 庭で除去した表土を容器に入れて敷地内に埋める「福島方式」に抵抗感を示す住民もいる。「(放射性物質を)埋める場所なんてない」。渡利地区に自宅がある主婦(41)は訴える。
 7年前に家を新築したが、放射線量が気になり、昨年9月以降、小中学生の子ども2人といわき市に避難中だ。庭は狭く、埋めるとすれば家屋のすぐ近くになり、室内の放射線量に影響しないか心配だ。隣家が埋める場所も気になるという。「4月には戻るつもりだが、安心できない」
 自宅敷地に埋めることを嫌って除染を拒否する住民も出ている。除染済みと除染しない民家がまだら状になれば放射線量低減の効果も下がってしまう。

■終了まで10カ月
 市は渡利地区の標高が高い場所から段階的に除染を進めるとしている。だが、除染技術を持つ業者は限られており、地区内の約6700戸の除染を終えるには、10カ月程度かかる見込みだ。
 福島市渡利の自営業男性(41)は「やっと除染が始まったという印象だ」と不満を漏らす。自宅には5人の娘と生まれたばかりの孫がおり、一時は自主避難を考えたが、仕事のため断念した。「一刻も早く除染してほしい」と切実な願いを口にした。

【背景】
 福島市は東京電力福島第一原発事故を受け、昨年9月、生活空間の放射線量を2年間で毎時1マイクロシーベルト以下に低減させる「除染計画」を策定した。市内で比較的放射線量の高い大波、渡利両地区を最重点除染地域に設定し、民家や事業所、道路など地域全体を除染する「面的除染」に取り組むことを打ち出した。大波地区は昨年8月に始めている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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