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明日への提言 福島医大看護学部 総合科学部門教授(心理学) 志賀令明氏 心のケア注意払って

 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故による避難生活が長期化する中で、福島医大看護学部総合科学部門の志賀令明教授(心理学)に避難住民の心の状態や今後のケアの在り方などについて聞いた。
 -避難住民は現在、どのような心理的状態に置かれていると言えるのか。
 「多くの避難住民は自分の最終的な居場所をどこに求めるのかが見えていない。中ぶらりんの状態と言える。今の仮設住宅や借り上げ住宅に何年かは過ごさなくてはならないと覚悟ができた人はまだいい。仮設住宅などに適応できず、早く帰りたいと思っている人ほど、つらい状況だろう。『ここは自分のいるべき所ではない』と場所を否定すれば、そこにいる自分をも否定することにつながる。抑うつ状態になる可能性がある」
 -高齢の避難者も多く、長期化の影響が心配だ。
 「特に高齢者の場合、気持ちが落ち込むと、関節や足腰が痛いなど、体の調子が悪くなる傾向がある。それを周囲が見過ごさず、抑うつが潜在していないか注意を払うべきだ。仮設住宅などで1人暮らしのお年寄りが多いと聞くが、特に男性は他者とコミュニケーションを取りたがらない人が多く、抑うつ状態を悪化させる懸念がある。無気力になったり、体調が悪くなって寝たきりになったりしてしまうことが心配だ。会津地方など雪深い地域に浜通りから避難した人には雪や寒さなどもつらく、慣れない生活のストレスも大きいとみられる」
 -避難者が精神的に落ち込まないためにはどんなケアが必要になるか。
 「周囲が避難住民の話に耳を傾けることが重要だ。それぞれが抱えているものを他者に吐き出しながら自分を振り返ることで、自我を取り戻し、気力が出てくるきっかけになる。若い人には近くの仮設住宅などを訪れ、支援活動などを通して避難住民と触れ合ってほしい。行政レベルでは、避難者が何かに参加している意識を持てるような仕掛けづくりを望みたい。住民同士で交流する機会をつくるのも1つで、この場合、男性が集まりにくいため、カラオケや軽くお酒を飲めるようにするなど男性が参加しやすいような工夫も必要だろう」
 -避難区域の見直しが予定されており、地元に戻れる避難者も増えてくる。
 「希望を胸に古里に帰ったのに、雑草に覆われた自宅の庭や、津波の被害を受けた家屋などを目の当たりにして、『これからどうしたらいいのか』と、もう1度ショック体験をする懸念もある。11日には各地でさまざまな追悼行事が行われると思う。重要な対象を喪失した1年後の記念日に、気持ちが崩れて一気に抑うつ感情が吹き出し、衝動的に自殺に至ったケースが過去に複数報告されている。県内でも沿岸部を中心に多くの人が震災による津波などで家族や友人を亡くしているだけに、気を付けるべきだろう。津波の映像などを見て、被災体験を思い出してショックを受けることも用心しなくてはならない」
 -避難住民にアドバイスはないか。
 「福島医大は震災発生以降、避難所や仮設住宅などを教員が巡回するなどして避難住民の心のケアに取り組んできた。1年が経過しても引き続き、力を注いでいくことになる。県民を対象に『こころの健康度・生活習慣に関する調査』も進めており、調査過程で心のケアが必要な人が判明すれば、個別対応もしている。避難住民の皆さんには日々、自分が何かをやったという実感を持つことを大切にしてほしい。やることは趣味でも、仕事でも何でも良い。決して萎縮することなく、自分自身のプライドを大切にしながら、日々を過ごすことが重要だ」

 しが・のりあき 大熊町出身。磐城高、東北大文学部卒。同大大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。岩手医大教養部助手、福島病院心理療法室長、秋田大医療技術短期大学部助教授などを経て平成10年から現職。61歳。

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