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【専門家集団の模索1】「ムラ」の議論を反省 不足した情報発信力

日本原子力学会の「年会」には全国から会員が集まった。原発事故の課題が山積する中で模索は続く=19日、福井市

 「想定を超える事態への対応に考えが及んでいなかった」。日本原子力学会の会長を務める東大大学院教授の田中知は、東京電力福島第一原発事故の厳しい現実を前に、専門家集団のトップとして深い自責の念を抱く。
 「学会は今まで何をしていたのか」。1年前の事故以来、批判が相次ぐ。福井市で19日から開かれた学会の「春の年会」で、田中は原子力の安全に関する研究に加え、福島第一原発事故の対応に総力を挙げる考えを強調した。
 ただ、原発事故の収束は見通せず、除染や廃炉への取り組みは始まったばかりだ。避難した住民がいつ帰郷できるのかも分からない。田中は20日の理事会関係の会合で「福島復興支援の強化」を掲げたが、明確な道筋は学会の外からはまだまだ見えにくい。

■接点少なく
 学会の中からは意識改革の必要性を指摘する声が出始めた。副会長の沢田隆は「研究者が『原子力ムラ』の中で活動してきたのは事実。行政との接点が不足し、原子力安全の研究成果が規制に反映されにくかった」と振り返る。学会が情報発信力をどう高めるかが課題の1つだ。
 東北大名誉教授の北村正晴は研究発表に当たって「(原発事故に対し)傍観者でいられない。責任があることを実感している」と述べ、原子力関係者が内輪で意見を交わす傾向があったことを率直に省みた。
 北村の発表を聞いた研究者からも反応があった。「反対派の意見を取り入れなかったことが事故の一因かもしれない。関係者として何ができるか、動いてみたい」と賛同する声が上がり、会場から拍手が湧いた。

■将来への不安
 会場には、反省の弁と同時に、戸惑いも交錯した。原子力の地域共生を研究する大学院生は「原子力の行方はどうなるのか。不安は大きい」とつぶやいた。
 太陽光や風力などの再生可能エネルギー分野に大きな関心が集まる中で、原子力の研究者は将来を思いあぐねる。「若手の声を受け止めながら議論する環境が学会に必要だ」と内側からの改革に期待した。
   ◇    ◇
 日本原子力学会は昭和34年に設立され、半世紀余りがたつ。大学や国の研究機関などの研究者である正会員が約7200人、学生会員が約600人、賛助会員は約250の企業などに上る。
 東電福島第一原発事故を受け、手探りで模索を続ける「原子力の平和利用を目指す専門家集団」の取り組みを追う。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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