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帰還/広野からの報告(37)往来増え治安懸念 少ない夜間人口、目届くか

パトロールの途中、住民に防犯への心構えを求める松本さん(右)

 増える交通量が治安面の懸念を拡大させている。

 東京電力福島第一原発の復旧工事などのため、広野町の6号国道には朝夕、車が連なる。町が1日に役場機能をいわき市から本庁舎に戻し、今月末に町民への避難指示を解除すれば、住民の行き来も多少増えると予想される。
 しかし実際に町内で生活するのは現在250人ほど。地域の治安は住民が普通に生活していることで保たれる部分も多い。警戒区域と違って出入りに規制のない広野の場合、日中は事業所などが活動しているが夜間の人口はぐっと減る。
 その治安を守るため、青色回転灯を備えたパトロール車が24時間態勢で町内全域を巡回している。昨年7月、町が県の雇用対策事業を活用して町民による警戒パトロール隊を組織した。隊員34人が4チームに分かれて、1日三交代制で町内を回っている。
 班長の1人松本功さん(70)は「不審者の姿はあまり見掛けなくなったが、犯罪者に休日はない」と張り詰めた表情で語る。パトロール車は常に3~4台が稼働し、見掛けない車が駐車していないか慎重に確認する。不審者を発見すると安全な距離を保ちながら、すぐに110番通報する。戸締まりの徹底など住民啓発にも取り組んでいる。
 震災から緊急時避難準備区域の指定が解除されるまで、町では数10件の空き巣被害があった。昨年7月にはいわき中央署が町内の一部の被害について少年を含む男5人の窃盗団を逮捕した。避難中に自宅が空き巣被害に遭った町内下北迫の女性(66)は「悔しさを誰にぶつければいいのか分からない」と憤る。テレビなどの家電製品のほか、先祖の形見として保管していた古銭などを奪われた。
 町を管轄する双葉署はパトロール隊と連携を取りながら不審者の発見に努めてきた。署は震災後、福島署川俣分庁舎に拠点を移しているが、広野町の駐在所には署員を24時間常駐させている。特別出向した「ウルトラ警察隊」なども目を光らせる。
 松本さんは環境が変化するにつれ「県外ナンバーの車が多くなり、不審者の特定が難しくなりつつある」と悩む。地元の事情を熟知している警戒パトロール隊の強みが発揮されにくい状況となり、隊員は神経をとがらせる時間が増した。

 火災の発生やその対応への不安もある。

 地域防災で大きな役割を果たす消防団の団員約120人のうち、今も町で生活するのはごく一部。隣の楢葉町の富岡消防署楢葉分署に消防署員が常駐しているが、防火、初期消火、火災の拡大抑止など広い分野で地元消防団の活動は欠かせない。町内の自宅で暮らす矢内光正団長(61)は「帰還するかしないかは団員それぞれの判断。火災が発生した際には、現状では避難先から駆け付けてもらって対応するしかない」と苦悩を語る。若者がどれだけ町に戻るかが不透明な状況にあり、今後は団員の確保も課題になる。
 町は新年度も警戒パトロール隊を運用する方針だ。町建設課産業グループの久田宗俊主任主査(44)は「住民の大半が町に戻っていない。近所の目が行き届かない環境にあり、引き続き防犯体制を維持する必要がある」と強調する。
 「地域コミュニティーが復活しなければ町の安全・安心は守れない」と松本さんは語る。町民の早期帰還を願い、隊員一丸となって任務を全うする覚悟だ。

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